ファッションと教養は似ている

女性のファッションは、毎年流行が移り変わりますね。

橋爪大三郎『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)
橋爪大三郎『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)

今年の流行色はブルーだとか、ゆったりめのシルエットがトレンドだとか、ファッション誌はそういう話題をどっさり載せています。

そこで、流行のものばかりを身につけるか、自分なりのスタイルにちょっと流行を取り入れるか、どちらのほうがファッション上級者かと言ったら、後者ですね。

自分の好みや自分に似合うものがわかっている人は、流行と自分との間に適度な距離感がある。流行をわかったうえで、流行にふり回されない軸がある。

教養もこれに似ていて、いろんな本を読んでいる人は、著者のバイアスと自分との間に適度な距離感を保ちながら、本を読むことができる。いちいち著者のバイアスにふり回されず「これはいいな」と思った考え方を、自分の考え方に取り入れることができる。

いろんな本を読むことで、教養上級者になれる

ファッションと同様、言論にも流行り廃りがあります。

流行の理論にまったく触れずに、自分の頭だけで考えるのは難しい。かと言って、流行の議論をたくさん頭に詰め込んだところで、それが何? ということになる。

そこで、自分が本当に大事だと思うことや、考えたいことを考えて「私はこういう考えですが、それがあなたの考え方と違っても当然だし、それでいいんじゃないですか」という頭の使い方ができるかどうか。

これが本当の教養深さと言ってもいいかもしれない。

自分のスタイルに流行を取り入れることがファッション上級者であるように、いろんな本を読むことで教養上級者になれるわけです。

その出発点として、自分が触れる情報にはすべて「バイアス」が含まれている、という前提を意識することが重要です。この本はどういうバイアスに基づいて書かれているのだろうか? 読者はこの姿勢を忘れてはいけません。

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