教養を身につけるにはどうしたらいいのか。社会学者の橋爪大三郎氏は「教養を正しく身につけるには3つのポイントがある。その一つは、いろいろな分野の専門家が書いた本を読むことだ」という――。

※本稿は、橋爪大三郎『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)の一部を再編集したものです。

新型ウイルス肺炎が世界で流行。都内感染者急増で危機感高まる=2020年3月27日
写真=アフロ
新型ウイルス肺炎が世界で流行。都内感染者急増で危機感高まる=2020年3月27日

教養を学ぶときに大切な3つのポイント

教養を学ぶのには、目の前の目的がない。「この問題を解決するので、この本を読む」というものではない。とにかく、何でも読む、何でも知る、のが教養かもしれない。

だからと言って、巨大な教養の森にいきなり分け入るのは、無謀というものです。

では、どうしたらいい? 道しるべが必要です。ポイントは3つ。これを、今後のガイドにするといいでしょう。

1、バランスよく学ぶ
2、「ほんもの」に触れる
3、納得して、楽しむ

ひとつずつ、説明しよう。

まず、その1。教養は、バランスが大事。

たとえば、やたら鉄道に詳しいけれど、政治がからきしわからない、のでは、教養とは言わない。これでは、鉄道オタクです。

鉄道に詳しいのは、いいことなのです。でも、バランスも大事。鉄道だけに偏っているのが、問題なのです。

学問は、この世界の成り立ちや仕組みに迫るものです。

この世界は、物理や化学や天文や、政治や経済や社会や、文学や歴史や哲学や、家族や育児や介護や、医学や数学やコンピュータや、…がごっちゃになった全体です。そしてそれらは、すべてつながっている。そのつながりを、つかむことが大切なんです。

このつながった全体の、ある部分を物理という。ある部分を政治という。ある部分を文学という。学問は、便宜上分かれていますが、もともとはつながっていると考えなければならない。

新型コロナでインスタント食品が売れた理由は?

たとえば、新型コロナウイルスの影響で、外出しにくくなった。インスタント食品の売れ行きが伸びた。それも、カップ麺より袋麺が売れ行き好調だという。なぜだろう。

学校も休校で、テレワークで、みな家にいる。家族がそろって食事をする。でも毎回、ちゃんと料理をするのは大変。安くて手軽につくれるのが、インスタントラーメンだ。結論として、売れ行きが伸びた。これは、何の学問の話だろうか。

新型ウイルスは、生物学。感染症の治療は、医学。流行を防ぐのに、外出を制限するのは、公衆衛生学(病気になったひとが、ほかのひとにどう影響するか、などを研究します)。ウイルスが怖い、感染が怖いという心理が働くのは、社会心理学(あるひとの心理が、ほかのひとの心理にどう影響するか、などを研究します)。栄養バランスを考えるのは、栄養学。政府が外出を控えるように指示したのなら、政治学。家族が疎ましくなってコロナ離婚になれば、社会学や法律学の話にもなる。――という具合に、コロナひとつをとっても、すべての学問がつながっているわけだ。