「桜を見る会」の会費補填問題が動いた。安倍晋三前首相の公設第1秘書が、補填分を含む前夜祭の収支の未記載だった責任をとって政治資金規正法違反罪で略式起訴。安倍氏はそれを受けて12月24日に記者会見、25日に衆参両院の議院運営委員会に出席した。「年内幕引き」を狙った形だが、この戦略の「損得」はどうだったのか――。
「他の大ニュースにぶつける」という首相時代の手段を踏襲
「露骨な日程設定だなぁ」
安倍氏が12月24日午後6時から衆院議員会館で記者会見を行うことを知った新聞、テレビの記者たちは失笑を禁じ得なかった。
前日の23日、小池百合子都知事は、同日の新型コロナウイルス感染者数を発表する際、翌24日の発表分はさらに多くなる可能性が高いと「予告」していた。従って、同日のニュースは「コロナ拡大止まらず」が大きく報じられることは確定していた。安倍氏は、そこに併せて記者会見を設定した。
7年8カ月に及ぶ安倍政権下では、不都合な真実が発生した時、他の大ニュースを発表して報道を分散させ、ダメージを少なくするのが常套手段だった。退任してからも、同じ手法を使ったのか。
「同じ」と言えば、会見時間が午後6時に設定されたのも、首相の時と同じだった。
「年内に幕引きを図ろう」と考えたが…
首相の時は、自分が言いたいことを冒頭で長々と発言し、記者からの質問にいくつか答えると、その後に公務があるとの理由で会見を打ち切り、しばしば問題視された。24日行われた会見は部屋の使用許可が午後7時までであるという理由で質問は打ち切られた。
ちなみに、会見の司会を行ったのは、安倍氏が首相時代に会見を仕切ってきた長谷川栄一・前内閣広報官。一貫して首相時代のルーティンで、ものごとが進んだ印象だ。
秘書の略式起訴と、自身の不起訴が決まった日に会見を開き、さらには翌25日に国会で与野党の質疑を受ける決断をしたのは、年内に幕引きを図ろうと考えたからだ。東京地検が刑事処分を24日に行うことにしたのも、安倍氏側の意向を「忖度」し、年内に政治決着を図ることが可能な日程とした、との報道もある。