「終わった」はずの「桜を見る会」問題が、にわかに盛り上がっている。「桜を見る会」の前夜祭に関して安倍晋三前首相の公設第1秘書が政治資金規正法違反で立件される見通しとなったのだ。安倍氏が首相を辞任してから再浮上したこの問題、国民が留飲を下げるような、分かりやすい結末を迎えるのだろうか——。
「桜を見る会」をめぐる問題について記者団の質問に答える安倍晋三前首相(中央)=2020年12月4日、国会内
写真=時事通信フォト
「桜を見る会」をめぐる問題について記者団の質問に答える安倍晋三前首相(中央)=2020年12月4日、国会内

「秘書を立件し、安倍氏から話を聞く」で幕引きか

奇妙なほどに情報が漏れてくる。読売新聞とNHKがこの問題について東京地検特捜部が動いていることを報じたのが11月23日。これを報道各社が追随し、今は各社の報道が、ほぼそろっている。まとめると

① 前夜祭の参加者から集めた会費に、安倍氏側が不足分を補塡ほてんしてホテルに支払った。
② 安倍氏の公設第1秘書は、その収支を政治資金収支報告書に記載すべきだということは理解していた。
③ 公設第1秘書が政治資金規正法違反(不記載)で立件される。略式起訴となる見通し。
④ 東京地検は安倍氏の任意の聴取を要請。安倍氏も応じる意向。
⑤ 安倍氏本人には刑事責任は及ばない。

というところだ。安倍氏本人に聴取する前から、安倍氏は立件されないと断じられているのは珍しい。要するに、東京地検は、言い訳のように秘書を立件し、安倍氏から1回話を聞くことで幕引きをはかる、ということなのだろう。だとすれば、落としどころがみえみえだ。

核心は安倍氏が繰り返した「ウソ」にある

捜査の展開には波乱はなさそうだが、今後注目されるのは、むしろ「政治」の舞台だ。安倍氏は首相在任中、「前夜祭」の出席者が払った会費(5000円)以外に安倍氏側が補塡したことは「全くない」と断言。「後援会としての収入、支出はない」ため収支報告書に書いていないことを何度も何度も訴えてきた。

だが、東京地検の捜査で、その前提は完全に崩れた。安倍氏側が補塡していたことは明らかになった。ということは、収支が生じるので政治資金収支報告書への記載が必要になる。そして、公設第1秘書は記載すべきだったことを知っていたという。

安倍氏はウソの上にウソの上塗りをする答弁を繰り返していたことになる。安倍氏は、一連の答弁をウソだと知って行っていたのか。そこが最大の焦点となる。これは「政治」の場で議論されるテーマだ。