地方の首長選で自民党の苦杯、苦戦が続いている。「コロナ禍」の中、地方選が大きく報じられないので目立たないが、選挙により地元組織が深刻な分裂状態になっているところもある。「後遺症」が続けば、今秋までに行われる衆院選に向けて深刻な懸念材料になる――。
岐阜県知事選で勝利し、花束を手にする現職の古田肇氏(中央)=2021年1月24日、岐阜市
写真=時事通信フォト
岐阜県知事選で勝利し、花束を手にする現職の古田肇氏(中央)=2021年1月24日、岐阜市

注目の「1.24」で、山形は惨敗 岐阜は分裂

注目の「1.24」は自民党にとっては、ほろ苦いものになった。この日、岐阜県と山形県で知事選が行われたからだ。

山形県では4選を目指す吉村美栄子氏が圧勝した。午後8時、投票が終わると同時にマスコミ各社は吉村氏の「当選確実」を一斉に報じた。自民党は、元県議の大内理加氏を推したが、得票は吉村氏の半分にも及ばなかった。大内氏は「政権与党との連携」を繰り返し訴えたが、肝心の菅政権の支持が急落している現状では、効果は乏しかった。

一方の岐阜は、現職で5選を目指す古田肇氏が、新人の江崎禎英氏に競り勝った。県選出国会議員の大半は古田氏を推したが、県連を仕切る県議たちの相当数が江崎氏につき、絵に描いたような自民分裂の選挙となった。古田氏を推した野田聖子党幹事長代行は、選挙には勝ったが、分裂選挙になった責任を取り「1つにまとめることができなかった。選挙結果を乗り越え、党が結束して新しい政治を行うため、人事を刷新したい」と述べ、自身の県連会長辞任を表明。県連人事を刷新すべきだとの考えもにじませた。

片方は大敗し、もう一方は党が真っ二つになる。自民党としては深刻な事態である。

「保守王国で負ける要素はゼロだったのだが……」

「1.24」だけではない。1週間前の17日には沖縄県宮古市長選で、自民、公明が推す現職が、国政野党勢力の推す新人に苦杯をなめた。昨年10月25日には富山県知事選で自民党県連が推す現職が、新人に5選を阻まれた。さらに7月にさかのぼれば鹿児島県知事選で、自民、公明両党が推す現職が新人に敗れている。

鹿児島、富山の両知事選は構図が似ている。戦前は現職が盤石と見られたが、保守分裂により自民支持層が分散。新人に票が流れ、番狂わせが起こったのだ。

自民党幹部の1人は「鹿児島も富山も保守王国。落ち着いて構えていたら負ける要素はゼロだったのだが……」と唇をかむ。