後期高齢者が医療機関で支払う窓口負担をめぐる自民党と公明党の協議の決着が、永田町をざわつかせている。成熟した連立のパートナーとして存在し続けた自公両党だが、その力関係に変化が見えてきている。7年8カ月に及ぶ安倍政権下と、今の菅義偉政権で、どう変容していくのか――。
公明党の党大会で、壇上で山口那津男代表(右)と両手を上げる来賓として出席した菅義偉首相=2020年9月27日、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
公明党の党大会で、壇上で山口那津男代表(右)と両手を上げる来賓として出席した菅義偉首相=2020年9月27日、東京都千代田区

菅首相のひと言で決着した「窓口負担」問題

「年収200万円以上ということでお願いできますか」

9日夜、都内のホテル「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」のレストラン「蒼天」で公明党の山口那津男代表と向き合った菅氏は、会談冒頭、こう切り出した。山口氏は「結構です」と短く答え、あとは2人で夕食を楽しんだ。

75歳以上の後期高齢者の負担増をめぐる与党協議は難航を極めていた。菅氏が田村憲久厚生労働大臣らに負担対象額を「170万円」以上に引き下げるよう指示。比較的低所得層の高齢者が多い創価学会に支えられる公明党は引き下げに難色を示した。その後、条件付きで「240万円以上」まで譲歩したが、その後は一歩も譲らない構えだった。

一方、自民党側も、態度は硬く、下村博文政調会長が、公明党の竹内譲政調会長との協議では「上から目線」の対応に終始。両党の関係をこじらせてしまった。

その膠着状態は、菅、山口両氏のトップ会談の冒頭で解消されたのだ。

絵に描いたような「足して2で割る」決着だが…

両党の妥協案を少し分析しておきたい。自民党は「170万円」から30万円、公明党は「240万円」から40万円歩み寄ったことになる。

さらに負担対象をみると自民党の「170万円」の場合、対象となる高齢者は全体の31%にあたる520万人、公明党の「240万円」は13%にあたる200万人だった。妥協した「200万円」は全体の23%にあたる370万人だから、公明党案よりも170万人増え、自民案よりも150万人減る。

まさに「足して2で割る」ような妥協案。公明党との交渉に際し「足して2で割るわけにはいかない」と言い続けてきた下村氏は、恥をかいたような形だ。

計算上は、公明党の譲歩幅がわずかに多いようにも見えるが、9日夜までは自民党側の譲歩はないとの見方が強かっただけに、公明党側が勝ち取ったという印象が強い。