菅政権の弱点は「菅官房長官がいないこと」
今回の与党協議で鮮明に見えてきたことがある。与党間の調整パイプが機能しないことだ。菅政権の誕生により、公明党との政策調整にあたる政調会長には下村氏が就任。ほぼ同時期、公明党の政調会長は石田祝念氏から竹内氏に交代した。
下村氏はベテラン議員で、政策には明るいが、交渉ごとが得意ではない。ちょっとしたひと言で相手を怒らせることも少なくない。一方、竹内氏は経験不足。自民党とのパイプも乏しい。窓口負担を含む両党の協議は、この弱点を見事にさらけだした。
言い換えれば、安倍政権下で官房長官を担ってきた菅氏のように、表裏で政府・与党の調整役を務める人物が、この政権にいないのだ。「菅政権には菅官房長官がいないのが弱点」という永田町のささやきが現実のものとなった。
今回のように、最終局面で菅氏が出てきてトップ会談で決着すれば問題ない、という考えもあるかもしれないが、政策決定の度にトップが出張ってくるようでは、与党関係は不健全になる。
両党にとって最大の懸案は、衆院広島3区の候補者調整
医療費窓口負担の問題は一応の決着をみた。だが、両党にとっては今後も調整すべき難問が多く立ちはだかる。「GoToキャンペーン」の見直しなども含めた新型コロナ対策。そして両党にとって最大の懸案は、衆院広島3区の候補者調整だ。
公職選挙法違反の罪に問われている河井克行元法相が現職のこの選挙区は、公明党の斉藤鉄夫副代表が比例代表からの鞍替え出馬を表明。
自民党の広島県連は、候補者選びの公募を断行。双方譲らぬ姿勢で緊張感が高まっている状況は、11月24日に配信した「自民党と公明党が繰り広げる『仁義なき戦い 広島死闘編』の全真相」で紹介した通りだ。自民党県連は12月8日、県議・石橋林太郎氏の擁立を決めている。
「広島3区」問題は、公明党が前幹事長の斉藤氏という超大物を擁立。一方、自民党は、「ポスト菅」を狙う岸田文雄氏の地元・広島県での候補者調整だ。双方譲るに譲れない事情がある。こちらも、現場レベルでの調整はできず、菅氏と山口氏に委ねられる可能性は高い。
その場合、どういう結末を迎えるか。