安倍氏が首相として165回使った「お答えを差し控える」

安倍氏の戦術は予測できる。補塡があったことなどは知らず、秘書から誤った報告を受けていたとした上で、核心部分については「東京地検で捜査中なので、お答えは差し控える」を繰り返すのではないか。

最近、SNSなどで大きな反響を呼んだデータがある。立命館大学の桜井啓太准教授が行った調査だ。桜井氏は1970年から今年10月8日までの間に、国会の本会議と委員会で「お答えを差し控える」という答弁が何回使われたかを調べた。その結果、安倍政権になってから「お答えを差し控える」が急増。安倍氏は首相として165回使ったという。安倍氏は面倒なことが起きると、常套手段として「差し控える」を使ってきた。

首相を退いた安倍氏は、証人や参考人として招致されない限り国会で答弁することはない。国会招致が実現するかどうかは大きなポイントだが、仮に実現しなかった場合にも、マスコミを相手にした対応などでは、この「差し控える」を繰り返して逃げ切ろうとするだろう。

野党は「解散恐怖症」で追求の本気度が疑われる

この問題は、野党の出方が注目となる。安倍氏を国会に引っ張り込めるか。そして、どこまで追い詰めるか。昨年来、この問題を追及し続け、結果としてウソの答弁を許してきただけに、リベンジに燃えていることだろう。

しかし、その野党には、あまり期待しないほうがいい。野党側は先の臨時国会でも、安倍氏を国会に証人喚問すべきだと訴えてきた。ただし、何ごともなかったかのように臨時国会は12月5日に閉会してしまった。

与党側の数の力に負けるのはやむを得ないとしても、追求の本気度が疑われる出来事があった。会期末に菅内閣の不信任決議案を提出しなかったのだ。

菅義偉氏が首相に就任してからの初の本格的国会論戦。新型コロナウイルスの感染拡大、「GoToキャンペーン」の場当たり的な見直し、そして「桜を見る会」の問題に加えて吉川貴盛元農林水産相が鶏卵生産大手の「アキタフーズ」から現金を受け取っていた問題も発覚した。学術会議の任命拒否問題もある。

議論すべきことはいくらでもあった。その途中で幕引きをしようとする政府・与党に、不信任決議案で抵抗の意を示すというのは野党としてやるべきことだろう。