内閣低迷の主因として、内部から批判の対象に
最大派閥の会長になるということは、即、党総裁選などで強大な発言力を持つキングメーカーになることを意味する。そして、その先に「3度目の首相」も見えてくる。安倍氏は「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」の会長に就任した。普通に考えれば、「ポストコロナ時代」にもう一度日本のかじ取りをする、という意欲があるということだ。少なくとも、そういう観測が出ることを楽しんでいたのは間違いない。
だが、その空気は今回の件で一変した。
党内には「首相を辞めてもまだ党に迷惑をかけるつもりか」「コロナ対策に政府・与党が一体として取り組む時に、ダメージは大きい」という批判の声がにわかに高まっている。「3度目の首相」の線は確実に消えた。次の衆院選で議席を失う可能性は低いだろうが、そこで当選しても「みそぎが終わった」ということで細田派を安倍派に衣替えできる環境ではないだろう。
安倍氏の説明に「納得できない」と応えた人は76%に
読売新聞社が26、27日に行った世論調査で菅内閣の支持率は45%だった。前月の61%から16ポイントの大幅下落だ。同紙によると、発足直後の調査から3カ月の支持率低下は29ポイントに及び、1978年3月以降の歴代内閣で、2008年の麻生内閣と並んで最大の下落となった。
各社の調査も似た数字が並ぶ。自民党の支持も落ちている。支持急落の原因は、菅内閣の新型コロナウイルス対策が後手に回っていることへの不満が主要因とみられるが、首相官邸や自民党幹部たちは、そうは考えない。この時期の「桜を見る会」問題が傷口を広げたという声が圧倒的に多いのだ。
これは「自分たちは一生懸命取り組んでいるのだが、後から弾が飛んできている」と自己弁護する考えがあるからなのだろう。実際、読売新聞の調査では安倍氏の説明に「納得できない」と応えた人は76%に達している。
政府・自民党に対する風当たりが強くなればなるほど、自民党内の不満は安倍氏に向けられる。出口が見えない新型コロナ対策では、菅内閣も当面苦戦が続く。支持の回復も簡単ではないだろう。そういう局面が続く間は、安倍氏に対する身内の視線は冷たい。
早期決着を目指した安倍氏の思惑とはうらはらに、21年は安倍氏にとって厳しい年となる。