その結果、トラウマになるような体験をした直後に、その体験の夢を見た人だけが、その後にうつ状態を脱し、心の問題を克服していることがわかったそうです。逆に、夢は見るものの、自身のつらい体験そのものの夢は見なかった人たちは、まだ克服できずうつ状態が続いていたというのです。

カルフォルニア大学バークレー校で睡眠を研究しているウォーカーは、この報告を受け、「レム睡眠が通常になればPTSDの症状が緩和される」ことを突き止めています。

睡眠には、浅い眠りの「レム睡眠」と、深い眠りの「ノンレム睡眠」があることは有名ですが、ノンレム睡眠で情報を整理し、レム睡眠で情報を統合していると言われています。また、レム睡眠は脳の調律を行い、感情を読みとる能力を育む役割もあります。

「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の役割
出所=堀田秀吾『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)

すなわち、レム睡眠が十分でないとソーシャルスキルが損なわれ、うつ傾傾向から脱却しづらくなると提唱しています。

「8時間以上の十分な睡眠をとる」

では、どうすればレム睡眠を十分に確保することができるのか──。その答えは、「8時間以上の十分な睡眠をとる」ことにつきます。忙しいからといって、寝ないで頑張り続けることは、泥沼へと引きずり込んでしまうんですね。

堀田秀吾『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)
堀田秀吾『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)

寝れるときに寝るといった“寝だめ”をする人もいると思いますが、ウォーカーは“寝だめ”には効果がないと断言しています。

全米の労働者の賃金を調べたところ、平均して睡眠時間が多い人ほど収入も多くなるという報告があるだけではなく、睡眠時間が足りないと、選挙での投票や慈善団体への寄付など、市民としての社会参与率が低下することも明らかになっています。

「毎日8時間なんて無理」という方もいると思います。ですが、「仕事」に基準を置くのではなく、「睡眠」を基準に生活を考えてみることはできるはずです。悪循環に悩まされている人は、睡眠第一の快眠生活に切り替えてみてことが大事です。

何も対策を講じない一日と、科学的エビデンスのあることを試しながら過ごす一日、人それぞれですからどちらのほうが良いとは言い切ることは難しいでしょう。ただ、ストレスは誰もが抱える永遠のテーマです。その対策を知っているか否かを考えると、「知っている」ことはきっとあなたの心強い処方箋になるはずですよ。

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