その際、私は必ず左の拳を握るようにしています。というのも、左右どちらの手を握るかで怒りに変化が表れることが、実験でわかっているからです。

「左右どちらの拳を強く握るかで他人への攻撃性は変化するか」。この興味深い研究を行ったのは、テキサスA&M大学のピーターソンらで、研究は次のように行いました。

24人の右利きの実験参加者にエッセイを欠かせ、左右いずれかの手でボールを力一杯45秒間握り、15秒間の休憩のあと再度握る、ということを4回行ったあと、別の部屋でエッセイを酷評したメモを見せ、怒りを湧かせます。

拳を机に打ち付けるビジネスパーソン
写真=iStock.com/Viorika
※写真はイメージです

その後、一番早く終わると相手にびっくりする音を鳴らすことができ、一番遅いと音を鳴らされるというゲームをやってもらいました。

握りこぶしが怒りの感情を起きにくくする

じつは、実験参加者は、最初から2分の1の確率で負けるようになっていました。もちろん本人たちはそのことを知らされていません。そうやってイライラするように仕組まれていたわけです。

その結果、右手を強く握った参加者のほうが左手を握った参加者よりも左前頭部の活動が優勢で、かつ攻撃行動が多かったことがわかりました。

人間の脳は、怒りを感じると左前頭部が右前頭部よりも活性化することが示されています。左前頭部の活動は怒りに関連した動機づけを反映し、右前頭部の活動は怒りから回避しようとする恐怖反応に関連しているようなのです。ですから、あらかじめ左手を力いっぱい握って、右前頭部を活性化させておくことにより、怒りの感情が起きにくくなるというわけです。

左拳を握ることが「アンガーマネジメント」になる理由
出所=堀田秀吾『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)

もし、あなたが怒りを感じそうになったときは、左手の拳を握ることを心がけるようにしてくださいね。嫌なことを言われそう、不愉快な体験をしそう……そんなときもあらかじめ左拳を握っておけば予防線になるはず。文字通り左手が「アンガーマネジメント」を左右するのです。

レム睡眠(浅い睡眠)を十分にとって感情を整える

③ 夜のストレス対策

ストレスや怒りをコントロールしながら、一日が終わる。「今日もいい日だったな」、そんなことを思うことができたら、きっと明日もいい日になるはずです。あとは寝るだけ……なのですが、実は睡眠にもストレス減退のポイントがあります。

「睡眠」は、トラウマを含めた心の傷を癒すために必要不可欠だと言われています。ラッシュ大学のカートライトらは、離婚など精神的に落ち込んでしまう経験をしたことで、うつ傾向にある人たちが見る夢について研究をしています。

カートライトらは、約1年間にわたって61人の被験者たちがどんな夢を見るのかを記録し、調査しました。夢の内容を分析し、起床時と同じ感情の夢を見たか、感情的なトラウマによってうつや不安が解消されたか、まだ残っているかなどを判断したというのです。