※本稿は、加谷珪一『お金で絶対に苦労しない方法を教えてください!』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
マイホームは「住宅」ではなく「資産形成」の視点で考える
——マイホームと賃貸では、どちらがお得ですか。先輩や友だちに聞いても、意見がすごく分かれるんですよ。一生家賃を払い続けるなんてムダだって言う人もいれば、せっかく買っても地震でつぶれたら終わりだ、なんて言う人もいて、よくわかりません。
これは永遠の問いですね。私も実によく聞かれるんですよ。ストレートに答えると、「資産価値のある家を手に入れられるなら、賃貸よりマイホームがおすすめ」となります。なぜか「マイホームを買いましょう」と言うことを期待されていることが多いんですが、実際にはそんなに単純に言えるものではありません。
どちらが得かと拙速に答えを求める前に、知ってほしいことがあります。会計的に見ると、マイホームか賃貸かによって、住まいの意味がまったく変わってくるという点です。
——会計的にってどういう意味ですか?
賃貸住宅の場合、家賃は家庭という事業を営むうえでの「経費」です。ですから、いくらの家賃が妥当なのかは、その支出に対して得られる効用のバランスによって決まってきます。ここでいう効用というのは、住環境に対する満足感です。
家賃というコストに対して、十分なリターンがあるのであれば、経費の使い方として「成功」しているといえるでしょうし、そうでないならタイミングを見て引っ越しを検討すべきでしょう。
一方、マイホームの場合、買った瞬間に「資産」になりますから、単なる「住宅」ではなく、「資産形成」の視点で考えるべきです。その意味で、何より資産価値が下がらない物件を選ぶことが絶対条件です。
継続的に資産の価値が増加するか、せめて下がらない家であれば、その買い物は「成功」だったといえます。もし購入後に「失敗」だったと気づいたとしても、そうそう簡単に買い替えるわけにはいかないでしょうから、購入時にはよくよく注意しないといけないわけです。
一般に日本の住宅は価値を維持できる期間が短く、戸建てで平均30年程度しかもちません。マンションだともう少し長くて、平均50年ぐらいでしょうか。マイホームを買うなら、少なくとも自分が死ぬまで、資産価値が担保できる家であることが必須の条件です。
そういう物件を見つけることができたなら買ってもいいでしょうね。間違っても「そろそろマイホームが欲しいから」「子どもも生まれたことだし」などと十分に吟味しないで買ってはいけません。あっという間に価値が暴落して、しまいには「負動産」になってしまいかねませんから。
こう考えてみると、比較すべきは、持ち家か賃貸か、ではないことがわかるんじゃないでしょうか。持ち家にしても賃貸にしても、それぞれの軸で成功か失敗か分かれます。