「性交がOKならフェラチオもOK」ではない

眼鏡をかけて高級スーツを着こなしている知的なあなたを好ましいと思ってデートにOKした女性がいるとします。その女性が、眼鏡をはずして全裸のあなたを好ましいと思うかは全く別問題であり、まして性行為をしたいかというと、大きな飛躍がそこにはあります。まして上司としてあなたを尊敬しているだけの女性や、本心では嫌なオジサン上司だと思っても職務上接する機会を持たざるをえない女性であればなおさらです。そのことを重々自覚してもらいたいものです。

勘違いして痛い目に遭わないためにも、性行為を誘う側は、行為ごとに段階的に同意をとった方がよいでしょう。その方が女性は、仮に好意を抱いていたとしても尊重されると感じるでしょうし、嫌なら逃げ出すことも可能になります。

また、女性が飲酒している場合、記憶がブラックアウトして全く覚えていなかったり、酩酊して正常な判断ができなかったりすることが少なくありません。つまり、イエス・ノーを正常に判断できない状況に置かれていることが多いと言えます。飲酒した女性と初めての性行為をすることは仮に女性がその気を見せていても避けるべきです。それは「同意をかすめ取る」ことになりがちだからです。

また、性行為の最初で女性が応じたとしても、その後のすべての行為に包括的に同意していない、ということも肝に銘じてほしいです。キスをOKしても、性交に合意しているわけではありません。性交はOKだとしても、フェラチオを嫌がっているのに強要した場合、それは別個の性犯罪になります。段階ごとに承諾を得るべきです。

また、近年トラブルが多いのは、相手の承諾なく性行為を録画することです。女性にとっては非常に恐怖であり、警察に相談して「録画されるなら同意しなかった」と訴える事件は今も少なくありません。

「事前に契約さえ結べばOK」でもない

また、途中から興奮して、暴力的だったり、女性の尊厳を傷つけたりする行為があれば、途中からでも相手にとっては意に反する性行為だという判断になるでしょう。

仮にあなたが変わった性癖をお持ちであれば、事前に説明して、納得してもらうべきであり、説明したうえで相手がいやがる行為はすべきではありません。女性の人権を尊重した性行為をすればトラブルは減ります。

では契約を結べば問題はないでしょうか?「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」という小説・映画が話題になりました。大富豪のSMプレイの好きな男性と恋に落ちた女性がプレイについて事前に契約を結んでSM的な性関係に入るというストーリーです。

ただ、今のNo Means Noの世界の法改正の流れから見れば、仮に契約があったとしても包括的な同意ということはあり得ず、その都度、行為ごとに同意を求める必要があります。これは訴追されないというだけでなく長期的に良い関係を築くためにも大切です。その作品でも、契約後に実際に関係を持った結果、やっていけないと考えてラストで破局してしまいます。