山形県天童市の観光農園・王将果樹園は、コロナ禍で「さくらんぼ狩り」を実施できず、経営危機にあった。しかし、さくらんぼのネット通販に切り替え、ネットでの販売額は前年比2倍を記録することができた。神戸大学大学院の栗木契教授は「これは経営学での『起業家的行動の有効性』の好例だ」と指摘する——。
完璧な防御壁構築の試みは徒労に終わる
ウィズコロナの日々が続く。第1波、第2波、そして第3波と、感染拡大の波が繰り返し押し寄せる。コロナ禍への対処の難しさは、かくのごとく予測が極めて難しいことにある。感染後の後遺症やウイルスの突然変異など、わからないこともまだ多い。寒さが増すなかで議論は絶えない。
ビジネス上の備えとしては、コロナ禍という大きな不確実性を前に完璧な防御壁を築こうとしても、徒労感が増すだけだ。強風を受け止める木々の枝のように変化をしなやかに受け止めて、対応することが必要である。そのためには、企業としてのどのような行動と備えが必要だろうか。
山形県天童市の観光農園・王将果樹園はいち早く人気のさくらんぼ狩りを中止し、さくらんぼの販売をオンラインなどの通販に絞り込み、危機を乗り切った。なぜ王将果樹園は、この切り替えを柔軟に行うことができたのか。そこからは起業家的行動の理論であるエフェクチュエーション(effectuation)の有効性が見えてくる。