転職の相談相手には2種類いる

さあ、いよいよ3年経って仕事を替えようとなったときに、相談してはいけない相手がいる。それが、就職氷河期を経験した40代のおじさんたちだ。彼らは不幸にも就職活動とバブル崩壊という危機が重なったことで、就職において相当な辛酸を嘗めている。いまだにその世代だけ非正規雇用の割合が高く、年収も他の世代に比べ少ない。

成毛眞『アフターコロナの生存戦略』(KADOKAWA)
成毛眞『アフターコロナの生存戦略』(KADOKAWA)

そうした凄惨な経験をした彼らの世代の頭のなかには、「就職は厳しい。転職などもってのほかだ」という論理が刷り込まれている。彼らの多くは、「転職したところで、給料は下がるよ」とか「同期で独立した人間がいるけれど、散々だといっていた」と語るだろう。

しかし、時代は変わっている。人口は減少の一途をたどり、実際には引く手数多あまただ。給料だって上がるケースはたくさんある。たしかにコロナの影響で一時的に厳しくなっているが、コロナ以前は空前の売り手市場だったし、今後も長期的に見ればその傾向が継続するだろう。

実は、40代の転職も思ったほど難しくないのに、自分たちには選択肢がないと思い込んでいるだけなのだ。それは彼らが悪いわけではなく、そうした経験をしてしまったから仕方がない。私が知る限り、ベンチャーも人手が足りなくて困っているところが多く、30、40代の経験者というのは喉から手が出るほどほしがっている。

転職にコンサバな世代は40代以外にも存在する。それが私より少し上の世代である70代だ。70代というのは第1次ベビーブーマーで、出生数が270万人に届くか届かないかくらいまで膨れ上がった世代だ。

背中を押してほしいなら50代半ば〜60代半ば

そこからがくっと出生数は下がり、1953年にはついに200万人を切る。その後、下降の一途をたどり、私たち1955年生まれは173万人程度。小学校時代、数年前は8クラスあったのに、4クラス分しか子供がいないから教室が半分余っていた。

すると何が起きるかといえば、競争がなくなる。学力も就活もあらゆる競争がなくなったのが私たちの世代で、政策ではなく、自然とゆとり教育が実施されることとなった。

そして同い年の人数が少ないと何が起こるかといえば、転職市場においても引く手数多となり、いまの50代半ばから60代半ばくらいの世代は転職しまくっている。極端な話、どこでも好きなところに転職できたのだ。

だから、この世代に「転職を考えているのですが……」と相談したなら、瞬時に「転職したほうがいいよ」という答えが返ってくるだろう。それは自分たちが転職できた世代であることも大きいが、冷静に現実を見ても、いまが売り手市場なのは間違いないからだ。

そういった事情があるため、就職や転職の相談というのは、誰にするかが意外と重要だったりする。止めてほしいなら、就職氷河期世代か70代にアドバイスをもらうといいが、背中を押してもらいたいなら、それ以外の世代に相談したほうがいいだろう。

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