5回くらいやれば確率的に1回は成功する

理由は簡単で、転職先への期待ばかりが膨らみ、「転職すれば、こんな生活が待っている」「今より格段によい環境で働ける」とかありもしないことを想像してしまうのだ。

人間は大きな決断をする際、損をしたくない、自分を納得させたいと思うあまり、過大な期待、過剰な願望を転職先に託してしまうわけだ。相手のいいところばかりを探した結果、幻滅してしまう恋愛と似ているかもしれない。

だから、背中を押すときは、「大して変わらないと思うよ」「失敗するかもしれないけど、辞めずに10年残っても、どうせ終わっているから転職したほうがいいよ」という話を毎回している。

本当は、転職したってしなくたって何も変わらない可能性のほうが高い。もし転職して失敗しても、気づかないふりをしてまた転職すればいいのだ。5回くらいやれば確率的に1回は成功する。それを知らずにたった1回の転職で諦める人は成功しないのだ。

本質的には「仕事人生の9割は“運”」

これは投資も同じで、ベンチャーキャピタルだって、投資先すべてが成功するなどとは思っていない。ざっくりと5件中1件でも成功すれば御の字という世界なのだ。しかし、目の前にあるチャンスに飛びつかないのはもったいない。

無責任なように聞こえるかもしれないが、仕事人生9割は運だ。

私がマイクロソフトの日本法人の社長になって、グローバルの売上の半分をたたき出せたのも、投資会社でうまくいったのも、運。経営の神様・松下幸之助も「運」という言葉をよく使ったと聞くが、本質的に成功している人の多くは運だといっている。

もし、「俺の実力だ」といっている経営者がいたら、気をつけたほうがいい。運で切り抜けたことを自分の才覚のお陰だと勘違いしている可能性が高い。私からすると、元上司のビル・ゲイツが大成功したのも運によるところが大きい。

何を隠そう私自身、運任せで気軽に転職してきた口だ。就職からしてそうで、企業訪問などの就職活動などは一切せずに、自宅近くの日米合弁中小企業に就職した。そこに「大志」などというものはなく、当時の彼女(今の家内)に「就職しないの?」といわれて立ちすくんでいたら、運良く彼女のツテで面接が叶ったというわけだ。

その会社には3年間お世話になって、「北海道の大地も飽きたなあ」と思って、パソコン誌をめくっていたら、出版社のアスキーが中途社員を募集していると書いてあった。「編集者もいいな」と思って上京したところ、入社1週間後にアスキーマイクロソフトという子会社に営業として出向になり、2年後には日本語版UNIXの営業担当に。

さらに2年後マイクロソフトが日本法人をつくるというので仕方なく転職したら、ビル・ゲイツが上司になった。