文在寅氏が大統領職を辞さない限り、日韓関係の悪化は続く
しかし、それも相手に寄りけりである。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は別だ。韓国の反日種族主義(反日トライバリズム)を利用して政権維持を図るような大統領には、相手の考え方を理解することでこちらの主張を受け入れてもらうような作戦は通じないだろう。
元徴用工の訴訟問題だけでない。アメリカやカナダ、オーストラリア、ドイツでの慰安婦像の設置問題(10月26日<「慰安婦像」の設置を許す文在寅氏には韓国大統領を辞めてもらうしかない>で書いた)、それに2018年12月の韓国軍による火器管制レーダー照射事件も、煎じ詰めれば文在寅大統領に責任がある。
文氏が大統領職を辞さない限り、日韓関係の悪化は続く。元凶は文在寅大統領なのだ。それゆえ沙鴎一歩は「文在寅氏には大統領を辞めてもらうしかない」と繰り返し主張してきた。
日韓関係を改善できるからと言って、日本が主張をあらためるようなことをしてはならない。それよりも日本政府は文在寅大統領の弱みを正確に把握し、それを武器に大統領の退陣を迫るべきである。
日本の外務省局長と韓国の外交省局長とが8カ月ぶりに協議
10月29日、外務省の滝崎成樹アジア大洋州局長が訪韓し、ソウルで韓国外交省の金丁漢(キム・ジョンハン)アジア太平洋局長と徴用工問題を協議した。この2人が直接対面するのは2月以来で、菅義偉政権としては初めての対面交渉だった。
報道によると、金局長は「日本政府と被告企業が誠意を見せる必要がある」と従来の立場を誇示し、韓国で年内に予定されている日中韓首脳会談への菅首相の出席を求めた。文政権は日中韓首脳会談に合わせ、日韓首脳会談を実現しようと画策している。
一方、滝崎局長は日本企業の資産の現金化は「極めて深刻な状況を招く。絶対避けなければならない」と金氏に示すとともに、菅首相訪韓の条件として日本が受け入れられる解決策を示すよう求めた。
ここで簡単に復習しておこう。元徴用工訴訟とは、日本統治時代に朝鮮半島から動員された韓国人労働者(元徴用工)が当時の勤務先を相手取り、損害賠償を求めた訴訟のことだ。これまでに約30件の訴えが起こされ、このうち3件については2018年10月に韓国大法院で新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業に賠償を命じる判決が確定した。
文在寅政権は「大法院判決を履行する」と主張するだけで、冷え込んだ日韓関係を緩和するための具体的対応策は示していない。これに対し日本政府は「対日請求権問題は1965年の日韓請求権・経済協力協定で解決済みだ」と主張し、「日本企業への賠償は一切認めない」との立場を堅持している。