芸能人の評価軸は2種類しかない

その評価軸とは、〈認知度〉か〈人気度〉か。

実は、芸能人・タレントにとっての大きな評価軸は、この2つしかありません。テレビというメディアでは基本的に認知の層を獲得できる人やコンテンツが求められ、ウェブメディアではどちらかというと人気を取っていくコンテンツが求められる。

言い換えれば、一方的に与えられるのがテレビというメディアで、視聴者・利用者が自ら選びにいくのがユーチューブをはじめとしたウェブメディア。そのメディア特性の違いが〈認知度〉〈人気度〉という評価軸の違いになって表れます。この違いに気づいていない人がテレビ関係者にも芸能関係者にもとても多いのです。

テレビタレントがユーチューブに挑戦してもなかなかうまくいかない場合、大きな原因はここを意識していないことにあります。逆に、人気のあるユーチューバーがテレビに出てもハマらない、というのも同様で、評価軸の違いに気づかずに苦しんでいるのです。

2014年、TBS系のバラエティ「水曜日のダウンタウン」で、おぎやはぎの矢作兼さんが提唱した「勝俣州和ファン0人説」という企画がありました。この視点がテレビとユーチューブの違いを理解する上でも好材料だったのでご紹介します。

知名度が高くても「ファン0人」なワケ

勝俣州和さんといえば、テレビで活躍している芸能人の代表格。あちこちの番組にゲストで呼ばれていますし、レギュラーも多数。朝・昼・晩、どの時間帯の番組にも起用されるので、世代を問わず、勝俣さんを知らない人は、テレビを見ている人にはほとんどいないのではないでしょうか。つまり、認知度はとても高い。

しかし、勝俣さんのグッズを持っている人、と言っては失礼ですが、見たことがありません。あれだけテレビに出ているということは、勝俣さんを嫌いという人がいない証拠とも言えますが、逆にものすごく好きな人もいない。

それを裏づけるように、勝俣さんが2020年4月に開設したユーチューブチャンネルも当初は苦戦続き。2カ月経過した6月時点ではチャンネル登録者数は2000人ほどで、動画再生回数も1本が1000回に満たないものが目立っていました。

勝俣さんの場合、勝俣さん自身がつまらない、ということではもちろんありません。むしろ面白いんです。ただ、勝俣さんが何か始めるということに対して、アンテナを張っている人が少ないため、気づかれていないだけ。「勝俣州和、実はユーチューブやってます!」とウェブメディアの大通りに看板を出せていない、ということを意味しています。

ちなみに、勝俣さんのチャンネルはその後、「ファン0人説を裏づける不人気ぶり」という形で話題になり始め、少しずつチャンネル登録者が増加中。勝俣さん自身も「ファン0人説」に言及する動画をアップして視聴回数を稼いでいます。ユーチューブ人気がないタレント、というポジション取りが成功しつつあるのでしょう。