「なんでもできる」はYouTubeではむしろマイナス

コロナ禍の4月だけで、芸能関係者からユーチューブチャンネル開設について100件以上の相談がありました。そのうち、この「認知度」と「人気度」の違いについてわかった上で相談に来た人は、たった1人。その1人というのは20代の新人マネージャーでした。

関口ケント『メディアシフト YouTubeが「テレビ」になる日』(宝島社)
関口ケント『メディアシフト YouTubeが「テレビ」になる日』(宝島社)

そして、現場担当者はわかっていても、上の決裁が下りないと結局うまくはいきません。その結果、100件以上の相談でも実際に僕らが動くことはありませんでした。

なぜなら、コンテンツとして戦う上での前提条件がそろっていないわけですから。これこそが、「あの有名芸能人がこれしかユーチューブで数字を取れないのはなぜ?」現象の根幹なのです。

テレビの世界では認知度も好感度も高い勝俣州和さんのユーチューブチャンネルが開設当初は跳ねなかった理由のもう1つは、「なんでもできるオールラウンドプレーヤー」であること。これまでの利点がマイナスに作用してしまった。

なんでもできる・こなせるからこそ、テレビの世界では「収録でスタジオに1人いると便利」と重宝されるわけですが、ウェブの世界ではむしろ逆。オールラウンドプレーヤーはキャラクターとしては埋もれてしまいがちです。

だから、もし勝俣さんが本気でユーチューブに打って出たいなら、勝俣さんが好きなこと・得意なことに絞って発信していく。特定のジャンルが好きなファンに刺さるようなものを地道にコツコツ出し続けることで、そのジャンルでの支持を集めていく。これが結局は最短距離なんです。

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