日本のサッカー文化にない「選手を売る」という考え方
日本のサッカー文化にないのは、選手を売る、という考え方です。それゆえ、クラブはずっと貧乏だし、選手はプロになることで目標を達成してしまいます。選手の隣にエージェントが付いて、選手をこの価格で売ってやろう、という野心家もいません。
エージェントもプロからプロへの移籍は担いますが、若い選手に目をつけません。そもそもこの国のシステムとして、高校サッカーの選手を売ることが禁止されています。FIFAの「18歳までは代理人をつけてはいけない」というルールがあるから遵守しているわけです。
しかし、それもこの国だけの文化です。他の国はなんだかんだで選手に目をつけていて、17歳の選手でもプロになれば価値に応じて売ろうとします。他の国の場合、「選手を売るために育てる」という考え方ですが、日本の場合は「プロにするために育てる」という考え方をしています。プロにすることが最終目的地。
他国は選手を売ってクラブが利益を得る。売るために選手を育てる。売るのであれば若いほうがいいから17歳までにプロにする。才能があるので育てて価値をつける――そういう考え方が日本は乏しいのです。その考え方があるかないかで育成の方法が全然異なるのは明白でしょう。
日本人の綺麗なサッカーでは海外で通用しない
日本の指導者に「基本となる練習を3つ、子どもたちにやらせてください」と言うと、おそらく、パス練習とシュート練習とドリブル練習が始まると思います。この点だけでも、海外と日本では“基本的なこと”の概念がそもそも違います。
たとえば、こういうことを日本では教えません。
「サッカーはどこでファウルをしてもOKで、どこでファウルをしてはいけないんだ」
「どこでボールを奪えばいいのか、どこで相手に体を当てれば突破を阻止できるのか」
こういった勝負に勝つために大事なことをしっかりと教える機会が非常に少ない文化だと思います。基本が1、2、3と杓子定規的に決まっていて、だからサッカーがすごく綺麗で、あまり接触のないプレーを好むようになるのだと思います。しかし、残念ながら、その綺麗なサッカーでは海外に出たときに勝つことはできません。