世界で活躍する、世界を変えるサッカー選手を育成するにはどうすればいいのか。強豪国の事情に詳しいサッカー指導者の稲若健志さんは「サッカー強豪国にはお父さんコーチはいない。親は基本的に子どもにサッカーの話をしてはいけないし、教えてはいけない」という――。

※本稿は、稲若健志『世界を変えてやれ! プロサッカー選手を夢見る子どもたちのために僕ができること』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。

サッカー
写真提供=東洋館出版社

「1年生には雑用」という日本だけに残る異常な文化

スペインのクラブは7歳、8歳からカテゴリーが1年毎に分かれています。7歳から始まり、日本で高校3年生に当たるフベニールAにいくまで12カテゴリーあります。

日本では、サッカーも学校と同じシステムを採用し、6年、3年、3年。一度チームに加入してしまえばクビになることは、3年間はありません。

しかし、その3年間で問題点が浮き彫りになります。それは、中学1年生や高校1年生のときに、サッカー選手として一番大事な時間を走りや雑用などで過ごさなくてはならないということです。1年生は苦労しないといけない、というこの国の文化的なルールが未だに存在します。このシステムは絶対に見直す必要があると思います。

1年生のときにやっている雑用は世界では当たり前ではなく、日本だけに残る異常な文化です。ましてや、その子どもや大人をフォローしてくれるスタッフも当然ながらいません。

親を喜ばせるためにサッカーをやるように変わってしまう

これは一例ですが、レアル・マドリードの場合、クラブに心理カウンセラーが3人います。日本のお父さん、お母さんは息子に対してアドバイスも多々していると思いますが、カウンセラーは必ず親に二つアドバイスをします。

①まず家に帰ってからサッカーの話をしてはいけない。
②サッカーは親が教えてはいけない。

これはレアル・マドリードなどトップクラブに限った話になりますが、親が子どもに対してどう関わればいいのか、ということを詳細に伝えます。親は子どもにどう声をかけたらいいのか、どうすればプレッシャーを与えずに子どもが育つのか。子どもが迷子になってしまうことが多々あるからです。

これは例え話ですが、親が子どもにあれこれ聞き過ぎるとどうなるか。

親「今日はどうだった?」
子ども「今日は活躍した」
親「良かったね」

次の日にまた、

親「どうだった?」
子ども「今日は点を決めたよ」
親「良かったね」

それを繰り返すことによって、子どもが自分のサッカーへの喜びではなく、親を喜ばせるためにサッカーをやるように変わってしまうのです。