プロの指導者は「大人が偉い、子どもは従え」とは考えない

少年団のお父さんコーチたちを見ていてよく感じるのは、子どもに言い過ぎてしまうコーチが多いことです。

稲若健志『世界を変えてやれ! プロサッカー選手を夢見る子どもたちのために僕ができること』(東洋館出版社 )
稲若健志『世界を変えてやれ! プロサッカー選手を夢見る子どもたちのために僕ができること』(東洋館出版社)

やたらと「俺は指導者なんだぞ!」という雰囲気を出し過ぎてしまうのです。仕事は対大人ですが、サッカーは対子どもなので、そこは考えなければいけない部分だと思います。

プロの指導者は「大人が偉い、子どもは従え」という考えはありません。子どもに対してもリスペクトを持って指導に当たります。

子どもたちはあまりにも言われ過ぎると、だんだんと「この人の言っていることは正しい」と思いながらサッカーをするようになります。しかし、それが本当に正しいかはわかりません。一つ言えることは、子どもに対してリスペクトを持たない関係などあり得ないということです。

さらに、この少年団制度の欠点として言えることは、選手の移籍が非常にしにくく、引き抜きがほとんどないことです。海外のクラブでは「あいつはいいぞ」という噂が回りに回り、必ずどこかのチームが引き抜きます。子どもからすれば、どこにいても活躍すれば上に行けるので頑張れるというわけです。

しかし、日本の場合は、どんなに少年団で頑張っても、いきなりJリーグのクラブから「君、うちのクラブに入らないか?」という声が届くことはまずありません。Jクラブと当該クラブの関係性、親との関係性、移籍をするに当たり乗り越えないといけないハードルがあるからです。

「このチームで優勝するんだ!」が美学になるのはおかしい

本来であれば、力のある子どもは移籍を繰り返しながらステップアップしていくのがベストです。「あの子は良い選手だから移籍したんだよ」「だからみんなも頑張ろうね」、そんな会話がそこかしこで生まれるような、いい流れをつくるべきだと思います。

それから、親同士がしがらみを捨てることです。親同士が色々と噂をする中で移籍の障壁となってしまうというのは、いったい誰のためでしょうか。

実力のある子どものためにも移籍させなければいけません。子どもが成長するために「この指導者が必要だ」と思ったときには移籍するべきです。そこにしがらみは関係ありません。

夢を実現するためには、それまでの周りとの関係は捨てるしかないのです。海外では友達に夢があるのであれば「お前、行けよ!」と送り出すのが当たり前です。日本のように「このチームで優勝するんだ!」というのが美学として語られるとしたら、それはおかしなことです。サッカー選手になりたいのならば、自分が上を目指せない環境にいつまでもいることは、一日一日を捨てていると思ったほうがいいかもしれません。それくらい、その場に留まることは意味を成しません。

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