ドナルド・トランプ大統領が再選した場合

1.トランプ、バイデンの両方に相対した対米経験を有していること

菅官房長官および同長官の側近議員らは米国に幅広い人脈を有しており、2019年5月に同長官が渡米した際にはマイク・ペンス副大統領、マイク・ポンペオ国務長官、パトリック・シャナハン国防長官代行(当時)らに面会している。特に政権の要であるペンス副大統領とは、両者の政権内での役割について意見交換し、その立場の類似性から深く意気投合した仲だと言われている。仮にドナルド・トランプ大統領が再選した場合、対米関係の安定性という観点から望ましいものと思う。

トランプ&バイデン
時事通信フォト=写真

また、バラク・オバマ、ジョー・バイデン政権時代にも、官房長官として当時難航していた米軍基地問題をはじめとした難問に取り組み、米国側と深い信頼関係を結んだ実績がある。バイデン前副大統領が当選した場合の外交・安全保障スタッフはオバマ時代のメンバーを踏襲する見通しとなっており、同政権の考え方や癖を肌感覚で理解していることは心強い。

大統領選挙の結果として、トランプまたはバイデンのいずれが勝利した場合でも、経験に裏打ちされた外交関係の構築が見込めることは、米中対立が激化する国際環境の中で、他の候補者と比べて菅官房長官のキャリアが勝っているポイントとなっている。

2.主要閣僚として経済政策・財政運営に関する見識を有していること

官房長官は月例経済報告等に関する関係閣僚会議を主宰する立場にある。つまり、第2次安倍政権の約8年間を通じ、菅官房長官は日本経済・政府財政の状況について、他の政治家の誰よりも責任者として詳細に把握してきたと言えるだろう。

新首相が経済状況に関して一からレクチャーが必要となるキャリアの人物では世界第3位の経済大国の舵取りは任せられない。そのため、菅官房長官が新型コロナウイルス問題による世界的な経済危機、そして日本経済の立て直しに関して、現職や総務大臣という内政上の主要閣僚ポストを経ていることは重要なポイントだ。

ただし、筆者は財務省に屈して2度の増税を行った現自民党政権の政策を諸手を挙げて支持しているわけではない。したがって、新型コロナウイルスによる景気悪化に対し、菅官房長官には財務省の意向を抑えて、日本経済再生のために消費税減税を断行することを求めたい。