日本人は電車が数分遅れただけで激怒してしまう。一方、イタリア人はまったく怒らず、平然としているという。なぜここまで違うのか。精神科医の清水研氏は「日本人とイタリア人では鉄道の到着時刻に関しての『べき論の境界』が異なる。これがわかれば、自分の怒りの感情にもうまく対処できる」という――。

※本稿は、清水研『他人の期待に応えない ありのままで生きるレッスン』(SB新書)の一部を再編集したものです。

電車の駅のホーム
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怒りの役割とは何か

さまざまな喪失と向き合うときに、怒りや悲しみといった感情は大切な意味を持ちますが、その際、重要なのは、正しく怒り、正しく悲しむことです。

誰もが怒りを覚えたり、悲しい思いをしたことがあるはずです。しかし、多くの人は怒りや悲しみという大切な感情の役割を知りません。なぜ、われわれ人間は、時に怒り、時に悲しく感じるのでしょうか。

「怒り」の感情が湧くのはなぜか。まずは、こちらから説明していきましょう。

心理学では、「怒り」というのは、自分の大切な領域が、理不尽に犯されたと感じたときに発動する感情だと言われています。あるいは、「こうあってほしい、こうあるべきだ」という期待が裏切られたときに生じます。怒りという感情は間違いを正すためのもので、敵を追い払う力があります。

例えば私が実際に対話をしたがん患者さんで、「まだ20代なのに、なんで俺が死んでいかなきゃいけないんだ」というふうに怒りの感情が生じる方というのは、「20代は健康であるべきだ。健康なのが、当たり前だ」という、当たり前だと思っていた期待が裏切られたからです。