その場を離れ、自分の怒りと向き合う

では、どうしたらよいか。激しい怒りの感情が湧いたときには、泣き寝入りするのでもなく、怒りを爆発させるのでもなく、「自分は腹が立っている」ということを認めた上で、取りあえずその場を離れて、まず怒りが暴発することは避けるようにします。

次になぜ自分が怒っているのかを見ていくようにします。可能であれば、信頼できる友人などに「悪いけど、ちょっと私の話を聞いてほしい」、「こういう話があったのだけど、どう思う?」と、腹立たしい感情をあらわにしながら、反応を聞いてみるのです。

色々考えたうえでも「やはり上司が理不尽だ」という結論に至ったとしたら、今度は「自分らしさを失わないためにどうするのがいいのか」、「自分にとってどうするのがいちばんメリットが大きいのか」、考えてみるのです。

上司が理不尽なのは承知の上で、会社にいるメリットの方が大きいと思えば、指示には従うが、上司の考えの方がおかしいという考えは持っておく。心は売り渡さないというのも方法の1つです。

「~べき」という価値観を修正する

しかし、自分が納得できない仕事をやり続けることは大きな重荷を背負って毎日を過ごすようなものですから、環境を変えることを考えることも必要でしょう。最終的に、「会社を辞める」ということも、場合によっては選択することもあります。

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とにかくいちばんいけないのは、何も考えずに、ただひたすら我慢をして感情をため込んでしまうことです。自分の怒りの感情と向き合い、自分が何に対して怒っているのか、ちゃんと見極めるべきなのです。

自分の境界線を見直す必要があるときは、最初は受け入れ難いかもしれませんが、結果的に自分の視点を広げ、懐を広くすることにつながります。

例えば、日本では電車は時間通りに来るのが当たり前だとみんな思っているので、乗ろうと思っていた電車がものの数分遅れただけで、待っている人はイライラし始めます。

しかし、イタリアに留学経験がある友人によると、イタリアではそもそも電車が約束通り来るという感覚がないので、数分程度遅れたくらいでは誰も怒ったりしないそうです。日本人とイタリア人では鉄道の到着時刻に関しての「べき論の境界」が異なるからです。

この例が示すように、狭い価値観にとどまらず、視野を広げることが、さまざまな考え方を理解するためのヒントになります。

自分の「べき」の根拠が、「今まで自分の環境ではそうだった」というだけで他者にとっては理にかなっていないことも少なくはないので、そのことに気がついた場合は、冷静に対処して修正する必要があります。

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