精神科医の清水研氏は仕事で燃え尽き、40代にはうつ病の一歩手前という時期をさまよったことがある。なぜそこから立ち直れたのか。清水氏は「20代の男性患者が口腔がんを再発したとき、私に『先生、会いに来てくれてありがとう』と言ってくれたのが忘れられない」という――。

※本稿は、清水研『他人の期待に応えない ありのままで生きるレッスン』(SB新書)の一部を再編集したものです。

常に患者が安心できるように接する医者
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「こうあらねば」に縛られる原因は親と社会

ほとんどの人が意識していませんが、人はそれぞれの中に「want(~したい)」と「must(~しなくてはいけない)」の2つの相反する自分が存在します。ミドルエイジクライシスに陥りやすい人は、この「must」の自分が強すぎることが多くあります。

実は、私もつい最近まで「must」に縛られた生き方をしていました。そういう生き方をしてきたのは、やはり両親の存在と、今まで成長する過程で影響を受けてきた社会の価値観がありました。

私の両親は一生懸命私を育ててくれたし、紛れもなく私を愛してくれました。何もできなかった小さな私の世話をして、さまざまな知識や知恵、前に進もうとする向上心を授けてくれました。

ただ、当時は「子供は甘やかしてはいけない」という考えが一般的でしたから、私の両親も「子供がどうしたいのか」ということを大切にするよりも、「こうあらなければならない」という考えに基づいた干渉が多かったと言えます。

その結果、私の中の「want」の自分は声を潜め、「must」の自分が形作られていきました。