通信産業を通じた中国のスパイ活動を懸念
こうした米政府の中国企業の締め出しの根拠の1つになっているのが、中国政府が2017年に施行した国家情報法です。
国家情報法の第7条では、「いかなる組織及び国民も、法に基づき国家情報活動を支持し、これに協力し、知り得た国家情報活動の秘密を守らなければならない」と定められています。これは、中国政府の求めに応じて、個人又は民間企業は中国の情報活動に協力しなければならないと解釈できます。同法第8条で、法に準拠し、個人又は組織の利益を守るとも規定されていますが、通信産業を通じたスパイ活動ができるのではと、諸外国から懸念の声が上がっています。
これに対して、米国のマイク・ポンペオ国務長官は、5Gクリーンネットワーク政策を発表。この政策は、米国の安全保障の観点から、信頼できないベンダー・通信事業者から5Gネットワークを保護することを目的としたものであり、日本を含む30以上の国と地域が参加しています。
NDAAの一環として、2020年4月に5Gクリーン・パス、同年8月にクリーン・キャリア、ストア、アプリ、クラウド、ケーブルを順次公表。信頼できる国とそのベンダーのみと取引を行うことを表明しています。
5Gクリーンネットワークの概要
•5Gクリーン・パス:ファーウェイやZTEなどの信頼できないITベンダーの機器を介して、米国外交施設の5Gネットワークへアクセスしないことを求める
•クリーン・キャリア:米国が信頼できないと定める中国の通信キャリアが米国の通信ネットワークに接続されていないことを求める
•クリーン・ストア:米国のアプリストアから信頼できないアプリの排除を求める(TikTokやWeChatを例示)
•クリーン・アプリ:信頼できないスマートフォンメーカーが、製造端末にアプリを事前インストール、またはアプリストアからダウンロードできないよう求める(スマートフォンメーカーとして、ファーウェイを例示)
•クリーン・クラウド:米国市民の個人情報、知的財産につながるビジネス情報を、信頼できないクラウドシステムに保存しないよう求める(アリババ、バイドゥ、チャイナモバイル、チャイナレテコム、テンセントを例示)
•クリーン・ケーブル:世界中の海底ケーブルから中国ベンダーを排除し、通信の安全性を確保