元徴用工問題へのメッセージ
その文大統領は日本政府に対しても、あまりにご立派なメッセージを送っている。光複節の演説では、戦後最悪の状態にある日韓関係の壁の1つである元徴用工問題について「いつでも日本政府と向き合う準備ができている」と語りかけた。言うまでもなく、これは1965年の日韓請求権協定で解決済みの話である。日本政府が同協定に基づき仲裁委員会の設置を提案しても拒否してきたにもかかわらず、上から目線で交渉に臨もうとするあたりは、さすがとしか言いようがない。
2018年10月に韓国の大法院(最高裁に相当)から元徴用工への賠償を命じられた新日鐵住金(現・日本製鉄)は8月7日に即時抗告し、資産強制売却(現金化)は来年以降にずれ込む見通しとなったが、文大統領は「司法の判断を尊重し、日本側と協議してきた。今も協議のドアは開いている」と揺さぶりをかける。相手の主張やテーブルには決して乗らず、自らの世界でのみ戦いを挑むのは得意技だ。
「遺憾砲」ばかりの日本政府は怖くない
75年目の「終戦の日」に安倍晋三政権の閣僚4人が東京・九段北の靖国神社を参拝したことは気に入らないようで、韓国政府は「日本の指導者が歴史を正しく直視し、真の反省を実際の行動で示すべきだ」と批判した。もはやツッコミどころが満載でどこから触れようか迷ってしまうだろう。同じ日には、日本の排他的経済水域(EEZ)内で海洋調査していた海保測量船に対して、韓国海洋警察庁が中止を要求。日本政府は抗議したものの、既成事実化を狙う戦略は天才としか言いようがない。何をされても「遺憾砲」ばかり繰り返し、実際には動かない日本政府なんて怖くないというわけだ。
文大統領は8月14日の映像メッセージで、慰安婦問題について「政府はおばあさんたちが十分というまで解決策を探る」とも語ったが、慰安婦の支援団体では集めた寄付金の私的流用疑惑が浮上。前理事長で与党「共に民主党」の国会議員、尹美香氏が団体の不正会計疑惑などで検察の取り調べを受けたばかりだ。また、慰安婦の支援施設の運営者は寄付金を集めながら慰安婦のためにほとんど使わなかったとの調査結果を官民合同チームが発表している。5年間に集めた約8億円のうち、支援施設に送られたのは3%未満というから「なんなんですか、これ」と驚くほかない。