ファストカジュアルで高単価×高回転率

ファミレス市場と対照的に、好調な業態がファストフード市場です。消費税増税などを理由とした消費低迷下において、他の業態の成長率が鈍化している中、ファストフードは、103.4%の成長で外食産業全体の市場規模を底上げ。コロナ禍においても、テイクアウト需要に対応、ファストフードは売り上げの減少を1割程度に抑えています。従って、今後の外食市場において、ファストフードにおける顧客層のニーズをいかに取り込めるかが、多店舗展開を推進するにあたり重要となります。

そこで、新業態ディッシャーズは、ファミレスとファストフードの中間に位置するファストカジュアルを意識した戦略となっています。ファストカジュアルは、オーダーから商品提供までは素早くファストフードに近いものとなっていますが、食材品質や価格はレストランに近く、客単価が高めなことが特徴です。この概念は20年以上前からあり、新しいものではありませんが、肥満が社会問題となっていたアメリカでは、ファストフードより少し高くても、安心して食べられるヘルシーな食事へのニーズが高まり、注目されるようになった食文化です。日本においても、フレッシュネスバーガーやサラダストップ!などがファストカジュアルに区分されています。

ディッシャーズにおいては、ファストを追求するためさまざまな施策が織り込まれています。例えば、注文は各席のタブレット端末から行えるため、注文待ちの時間はありません。配膳もあえてセルフサービスではなく、店員が運んで来てくれる方式を採用、カウンター前での待ち時間を無くし、スピーディな料理提供を可能としています。会計もキャッシュレス対応のセルフレジでスピーディに完結します。

一方で、価格は従来のびっくりドンキーとほぼ同水準に設定されています。レギュラーハンバーグディッシュは、びっくりドンキー新宿靖国通り店で(税抜)738円、ディッシャーズ新宿住友ビル店では(税抜)780円となっています。ハンバーガーなどの一般的なファストフードよりも少し割高ですが、ファミレスで提供している高品質の商品と同じものを提供しています。

女性客の取り込みが今後のカギ

ディッシャーズは、びっくりドンキーで培ったブランド力・品質を武器としつつ、ファストフードの顧客層取り込みにチャレンジした新業態と言えます。これまでのびっくりドンキーは、都市部にはあまり出店していませんでしたが、ディッシャーズは新宿・江の島のオフィスビル街や複合商業施設内に出店、ビジネスマンや若者をターゲットとしています。省スペース・省人化によるコンパクトな店舗は、都市部への進出を可能とし、既存のびっくりドンキーと競合することなくビジネスの拡大が可能です。

日本におけるファストフードは、ハンバーガーに限らず、牛丼チェーン、ラーメンチェーンなどさまざまありますが、女性が気軽に一人で入りやすい業態はそれほど多くはありません。従って、今後のディッシャーズの成否は、サラダなど健康志向を強調したメニュー、一人でも気軽に入れる店舗の雰囲気を、いかに女性に訴求できるかがポイントになるのではないでしょうか。

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