「東京を除外」で謝罪する羽目に
菅が暴走してしまうのだ。「Go To」は8月からの開始が見込まれていた。だが、菅が旅行代金の割引に限り7月22日から実施すると主張したのである。
「一斉休校の影響で、八月になっても登校しなければならない子供もいる。そのため菅氏は、子供も大人も確実に休める七月二十三日からの四連休も割引対象とするべきだとしていた」(官邸関係者)
策士策に溺れるである。8月中に経済回復の兆しを安倍に見せなければ、ポスト安倍にはなれない。焦りが菅を自滅させたのであろう。
東京の感染者数が増え続けていた。小池都知事の、「無症状の感染者も出ている中で、どう仕切りをつけるのか。これは国の問題だ」という批判に菅は、「圧倒的に東京の問題」だと突っぱね、予定通りに実施すると強気だった。
だが、全国から東京の人間が観光に来てもらっては困るという声が上がった。安倍も計画を変更しないと強気だったが、7月16日、東京の感染者が過去最多の286人になったと聞くと、前言をあっさり撤回して、東京の発着旅行を対象から外すとしたのである。強気だった菅も、会見で「直前になって東京の感染が拡大をしているという現実の中で判断をさせていただいたわけでありますので、そこについては大変申し訳ない」と謝罪するはめになった。
菅は悔し紛れに、多くの感染者が出ているキャバクラやホストクラブに対して、風営法で警察官の立ち入り調査をやっていく必要があるという趣旨のことを、フジテレビの報道番組でしゃべったのである。
この責任は安倍首相1人のものか
官憲を導入して強制的に休業させることをやれば、次々に対象を広げていくに違いない。私などは、戦前の悪法「治安維持法」を思い起こす。コロナ感染に乗じて、ただでさえ私権の制限が狭められているのに、さらに警察まで動員しようという危険な考えに危機感を持たなくてはいけないはずだ。
6月18日以降、安倍首相は会見も、週1のペースで開かれている国会の委員会の閉会中審査にも出席していない(北海道新聞7/18 17:00)。さらに秋の臨時国会も開きたくないと漏らしているという。説明責任を放棄したということは、もはや政権運営の情熱を失ったと見るべきであろう。
これまで安倍の親衛隊として力を誇示してきた今井ら腹心たちの数々の失態。存在感を増してきた安倍の天敵・石破茂の台頭。政権内から噴出してきた露骨な安倍批判。低迷する支持率。「退陣」の二文字がはっきり見えてきた安倍政権だが、主がいなくなれば、彼にパラサイトして、わがもの顔に振る舞ってきた連中が権力を失うのは必定である。
官邸を伏魔殿にして、人事で官僚を取り込み、経産省主導の不透明な政権運営は、この国を歪な形に変えてしまったと私は考える。言論表現の自由は狭まり、国による監視は強化され、医療・年金制度は崩壊の度を早めている。
その責は安倍をはじめ、今井たち忖度補佐官たちも負うべきことはいうまでもない。(文中敬称略)