夜10時就寝、朝6時起床をつづける
【三宅】当時の睡眠時間は何時間ぐらいですか?
【中澤】8時間くらいです。夜10時から午前2時の時間帯に寝ると、成長ホルモンが一番よく出て、なおかつ体の疲労物質が一番除去できるという説がありますよね。それを知って以来、できるだけ夜10時には寝て、朝は6時に起きる生活をずっと続けてきました。
【三宅】一度リズムに慣れてしまうと、それが当たり前の感覚になりますからね。
【中澤】そうですね。その点、僕にとって良かったのは、早寝早起きが子供のときから習慣づいていたことです。親がかなり厳しくて、子供のころから9時以降は寝ろと言われていたので、早寝早起きはまったく辛くありませんでした。
【三宅】理屈の上では「早寝早起きがいい」とわかっていても、なかなか実践できない人が多いように感じます。
【中澤】朝早くから行動すると、体の生活リズムが整います。生活リズムが整うと、日中のパフォーマンスも上がりますから、いいことづくしだと思います。今の時代であれば、時差通勤もできますし。
それにいいアウトプットを出したいなら、しっかり充電することが絶対に必要だと思います。心身ともに疲れた状態でいい仕事をしようと思っても、ちょっと無理がありますよね。
【三宅】同感です。ただ、海外で試合があるときはリズムが崩れませんか?
【中澤】それはあります。普段から朝まで飲み歩くような選手は、体内時計が自由自在なので、時差に強いとよく聞きます。僕のように規則正しい生活を送っていると、本当に時差がきつい(笑)。
とはいえ、どれだけ苦しくても、午前中からしっかり体を動かして、体内時計をできるだけ早く整える最大限の努力はします。その努力を怠ると、試合のコンディションに露骨に影響が出ることがわかっていますから。
【三宅】なるほど。グラウンドの上以外でも、常に戦っていたわけですね。
選手としての差は、グラウンドの外での行動で生まれる
【中澤】結局、選手としてグラウンドでやれることは、どうしても限られるのです。もちろんグラウンドでは全力を尽くしますが、それは他の選手もやっていることです。
その点、僕は周りの選手とくらべて、突出したセンスや技術を持っていたわけではありません。実力がない僕が「他の選手と差をつけるために何をしなければいけないか」を考えたら、やはり「食事と睡眠に人一倍気を使う」という結論に行き着いたのです。
【三宅】背筋がピンと伸びるようなお話しです。それは、中澤さんがスター選手になられたあとも続けられた?
【中澤】もちろんです。やはり、普段からお酒をたくさん飲んでいる選手や、生活サイクルが乱れている選手は、大体どこかで怪我をしますね。そのとき本人は「練習がハードだった」とか「もう年だから」と言い訳をするのですが、好きなものだけ食べて、体を休ませなかったら、体が悲鳴を上げるのは当然です。
とくに食事に関しては、すぐ目に見える結果は出ません。昨日、バランスのとれた食事をとったからといって、今日の試合でキレキレの動きができるわけではありません。その効果が現れるのが、1カ月後なのか半年後なのかわからないのが、食生活なんです。
でも、そうした小さな努力の積み重ねが、僕のサッカー人生を形づくったことは間違いありません。