日本は「議会によるコントロール」が足りない

【佐藤】日本なら、国会議員に極秘情報を渡せば、たちまちメディアに漏れてしまいます。

手嶋龍一、佐藤優『公安調査庁-情報コミュニティーの新たな地殻変動』(中央公論新社)
手嶋龍一、佐藤優『公安調査庁 情報コミュニティーの新たな地殻変動』(中央公論新社)

【手嶋】しかし、アメリカの情報特別委員会の議員から極秘情報が漏れたことなどありませんね。レーガン共和党政権の時代に、イラン・コントラ事件が起きて、国家安全保障会議や情報機関の在り方に厳しい批判が巻き起こりました。レーガン・ホワイトハウスにいたノース中佐が、イランへの武器売却代金の一部を中米ニカラグアの反政府ゲリラ・コントラの支援に利用しようとして露見したのです。これをきっかけに、アメリカ議会は、情報機関への監視を強めていきました。

イギリスでも、MI6に対しては、議会のグリップがかなり効いています。翻って、日本では、公安調査庁や内閣情報調査室の活動を議会がコントロールしているかといえば、ほとんどグリップは効いていないように思います。

インテリジェンス機関にこそ、チェック機能が必要だ

【佐藤】その通りですね。公安調査庁に限らず、外務省のインテリジェンスにも、警備・公安警察の活動にも、議会の十分な監視は及んでいないと思います。衆参の予算委員会とか、決算行政監視委員会で、予算と決算の両面から、その活動に睨みを利かせる建前にはなっています。しかし、肝心の情報活動については、監視機能は働いていないと言わざるをえない。

【手嶋】佐藤さんのようなインテリジェンスのプロフェッショナルが、議会から睨みを利かせていれば別でしょうが、国民が選挙で選んだはずの国会のチェック機能は十分とはいえません。国民の目がなかなか届かないインテリジェンス機関にこそ、チェック・アンド・バランスの仕組みが大切なのですが。

【佐藤】情報機関の側にとって、議会はたしかに煩わしい存在なのですが、長期的な視野にたてば、国民が味方になってくれるのですから、監視は受けた方がいいと思います。

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