日本は香港難民の受け皿になるべきか

今回の同法成立を経て、民主派の活動家らが急遽、どこかの国に逃げようとしても新型コロナによる渡航制限がかかっており、行ける国がほぼ存在しない。香港市民の家族関係を考えた時、シンガポールやマレーシア、タイなど東南アジアのどこかに親戚なりが住んでいるケースがとても多いが、そこへ身を寄せるのも現実的なチョイスにはならない。

「逃げ場」となる受け皿国の候補として「日本が立ち上がるべきだ」という意見もネット上では多く目にする。しかし、期待に反して日本はそもそも移民の受け入れスキームが(海外の人の目からして)整っている国とは言えず、さらに政治難民として日本での居住を狙ったにしても、年間申請者は1万人を超えているにもかかわらず許可されたのは81人という実態がありハードルは高そうだ。

前述のように、すでに一部の民主活動家は台湾に脱出している動きもある。一方で日本での「活動家保護」の裾野を広げるために、在日香港人のグループが1日、衆議院議員会館で「国際的連帯の必要性」と銘打った会見を開き、日本政府による香港市民庇護を訴えた。

中国は「市民を捕まえる訓練」を公開

一方、中国政府による締め付けはさっそく始まっている。香港駐留の中国人民解放軍は、高速艇などで香港領から逃げ出す市民を捕まえるという設定で行った訓練の状況を動画で公開した。香港には歴史的に見て、中国の圧政から逃れて命からがらたどり着き、安住できた人も多い。香港で人民解放軍による「逃げ出す市民を追いかける訓練」を見せつけられ、非常に不愉快な思いをする市民もいることだろう。

国家安全維持法では、香港市民はもちろん、香港の方向性に異論を唱える外国籍の市民さえも法令違反の対象とされる。果たしてこうした状況で「世界に開かれた街・香港」がこれからも維持できるのだろうか。

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