自分の「獣道」を探そう

【小林】国家には権力の分権があるけれど、GAFAにはそれがありません。一方、潤沢な資金とデータがあります。僕たちに必要なのは、ちゃんと監視すること。GAFAなどをおおいに利用しつつも完全に依拠するのではなく、おかしいと思えば文句を言ったり利用を止めたりすればいい。あるいは代替のサービスを見つけてもいい。その選択肢は僕たちが持っていると『アルゴリズムフェアネス』で説いておられますが、まさに主権はユーザー側にあると思います。

小林 弘人『After GAFA』(KADOKAWA)
小林 弘人『After GAFA』(KADOKAWA)

一方、僕はGAFA、特にデジタル上のプラットフォームに対して、旧来の独禁法とは異なる法規制のようなルールが必要だと思っています。ガバナンスとテクノロジーは切り離して考えたほうがいいでしょう。

そしてもう1点、間違いなく今後のビッグイシューになりそうなのが、エシックス(倫理)の部分です。IoTなりAIなりを使うにしても、それを決めたクライテリア(判断基準)は何かを開示していなければ危険です。UIならユーザーを自らの利益に誘導していないか、AIなら社会的に正しいか否かなど……。

【尾原】エシックスの語源は「獣道」という説があります。以前、梅田望夫さんが仰っていたことですが、獣が王道を歩くと、狩猟者にかんたんに狙われますよね。だから生き残るためには、自分だけの山道を切り開くしかない。その中で、もっとも生存しやすい道が獣道。エシックスとは本来はそういうもので、つまりは精神的にみんなが生存しやすい獣道だと。

21世紀の地球は、イノベーションを起こさなければ持続できないことが確定しています。だから僕たちは、必死になってそれぞれ自分の獣道を探す必要がある。ではその作業はつらいかといえば、必ずしもそうでもありません。むしろ意識的に楽しむように仕向けるべきだと思います。

【小林】そうですね。例えば人とつながることも重要ですが、それは必ずしも地域や会社組織のコミュニティに依存する必要はありません。それこそ精神的なプロトコルでつながることもあるでしょう。そういう自由度が高くなることによって、個人の選択の幅も広がります。そうするとおのずと道は開けるんじゃないでしょうか。

(構成=島田栄昭)
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