育児に上手に巻き込め「娘の弁当作りは16年間、夫が担当」

●Lesson3 姉妹とはいえ個性に合わせて

香音さんと絵美里さんは性格も気質もまるで違った。バイオリンへの向き合い方もそれぞれ。香音さんは感性豊かで天才肌。絵美里さんはコツコツと積み重ねる努力家タイプ。

「同じ親から生まれたのが不思議なぐらい真逆の性格でした。比べようがありませんが、そもそもその子その子に個性があるし、達成度も違います。姉だから妹だからという見方はまったくしませんでした。それぞれの名前で呼んで、その子に合わせた子育てをしてきましたね。言葉がけひとつとっても、香音ちゃんには『やればできる』と、とにかく励まして、できたら褒める。絵美里ちゃんは習ったらわりとすぐにできるので、できたことに対して『上手ね』『うまくできたね』と褒めるようにしていました」

香音さん(左)、絵美里さん(右)
写真=小林家より提供
香音さん(左)、絵美里さん(右)

姉妹で同じ道を選んだ二人、当然ながらライバル心が芽生えることもあったそうだ。しかし今は、互いにリスペクトし合う仲のよさだ。

「妹は基本的に性格がいいし、真面目。私は妹ほど真面目にできないので、80%までは簡単にいくけど、最後の20%を詰められずにポコポコと穴があく。妹は最後まできっちりと詰められるんです。ノートもすごくきれい」と香音さんが褒めれば、「私は何をするにも時間がかかるし、要領も悪いけれど、姉は要領もよくて、何でも自分の力で解決できてスゴイ」と絵美里さんが返す。

そんな二人が口をそろえるのは、親からああしなさい、こうしなさいと命令されたことがないということ。

「子どもを一人の人格として見たら、自分の思うようにさせようとは考えられませんでした。この子は今こうしたいんだ、じゃあそれをさせてやろうと、それぞれに思いましたね。もちろん大変な時期もありました。それを乗り越えるには、忍耐力が絶対に必要。私も子どもがいなければ、ここまでの忍耐力はつかなかったでしょうね(笑)」

●Lesson4 パパの力を大いに借りる

聖子さんが育児を心から楽しめたのは、夫・弘典さんの存在も大きかったそうだ。

「イクメンのはしりですよね。いわゆる恐妻家(笑)。身近に子どもがいなかったせいもあって、生まれるまでは、そんなに子どもが好きという感じでもなかった。私もそうですが、子どもが生まれたときから、こんなに変わるものなの、というぐらい変わりました。いろいろなことを手伝ってくれたので、私は子育てが大変というより、子どもってかわいいねと思える余裕が持てました」

夫・弘典さんと娘たち
夫・弘典さんと娘たち(写真=小林家より提供)

子どもたちが小さい頃から、休日になると、弘典さんがプランを立てて、家族をあちこちに連れ出した。アスレチックや公園、いちご狩り、潮干狩り、牧場……、さまざまな自然体験で、体を思い切り動かした。

「体験に関しては、誰にも負けないぐらい家族で共有しました。子どもが科学に興味を持ったら科学館に連れていくとか、子どもの『なぜだろう』という知的好奇心を深めるような場所にもしょっちゅう行っていました」

それにしても、一体どうしたら夫をイクメンにできるのだろうか。

「ママはつい頑張って自分で何でもやりがちですが、何でもかんでも自分でできるって思わないことですね。子どもは夫婦で育てていくものですから『これお願いできる?』と『あれを買ってきてもらえる?』とか仕事をお願いする。そうすると自分で気づいて、子どものお世話をしたり、おむつを買ってきたり、何でもしてくれるようになりました」

小林家では、子どもたちのお弁当はパパが担当。幼稚園から高校まで、なんと16年間作り続けたそうだ。

「子育ては、お母さんの情緒が安定していないと十分に楽しめません。自分一人で抱え込まず、夫でも近所の人でも頼めることは頼み、子育てを気楽に考えることが大切なのではないでしょうか。子どもが小さいうちは先が見通せないので不安だらけですが、子どもの喜ぶことをやらせてやるのが一番。子どもの喜ぶ顔を見て、ママも幸せを感じられるようになるのだと思います」