「勉強しなさい」と言われなかった姉妹は慶應&国立大医学部合格

●Lesson1 子どもの様子をじっくり観察

聖子さんが最初の子、香音さんを観察するようになったのには訳がある。今でこそ素敵なレディーに成長した香音さんだが、赤ちゃんの頃は、繊細で神経質(つまり過敏)で、ちょっとした物音でも泣いてしまうような子だったという。イヤイヤ期も大変だった。離乳食をなかなか食べない、夜泣きも母乳をやめる1歳半まで続いたそうだ。

「初めての子育てはわからないことばかり。育児って本当に大変! と思いました。でも、赤ちゃんってこんなものかなと思いましたし、親としての私が試されているのかな、とも。当時、お仕事をしていなかった私にはたっぷり時間がありましたから、とにかく香音ちゃんをじっと観察したのです。あなたはどうしてそんなに泣くの? 何が気に入らないの? って。いろいろ試すうちに、香音ちゃんが笑顔になる瞬間があって、ああ、あなたはこうしてほしかったのね、ということがわかってきたんです」と聖子さん。

それは抱っこだったり、高い高いだったり。香音さんがなかなか食べないときは、聖子さんが楽しそうに食べる様子を見せることで解決した。気持ちのいい環境に落ち着くと、香音さんはニコニコ笑顔になり、すやすや寝てくれるようにも。聖子さんは、その様子をこまめにメモしていたという。どういうときに何をしたら喜ぶのか、ご機嫌が直るのか。

「香音ちゃんで鍛えられたおかげで、絵美里ちゃんのときは、もうラクラク子育てでしたね。もともと、笑って生まれてきたような子で、本当に手がかからなかった。これが逆だったら大変だったでしょうね」

聖子さんはそう笑うが、聖子流子育てはこれで終わりではない。

*本来「マザーリング」とは、母親が幼児に示す愛情行動のこと。「マザーリングコーチ」は、妊娠、出産、育児の時期の母親の精神的なストレスや不安を軽減するコーチングのこと。

●Lesson2 見守りと言葉がけ

「勉強しなさい」「練習しなさい」と一度も言われたことがないのに、音楽活動を続けながら慶應医学部に合格した小林姉妹(国立大の医学部にも合格したそう)。その秘訣を二人に聞くと、「時間の使い方を工夫しました。忙しい時期をずらしたり、すき間時間を利用したり。勉強と音楽、どちらかを選ぶことができなかったので、どっちもやるしかないって感じですね」(香音さん)、「私は姉の影響です。姉がやってきたから必然と」(絵美里さん)と言う。

小林姉妹のベースにある「諦めずに頑張れば、いつかできる」という自己肯定感は、聖子さんの見守りと言葉がけで育まれたものだ。

お座りができるようになった頃、香音さんがペットボトルに興味を持ったことがあった。

『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2020』
『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2020』(プレジデント)

「小さな手にキャップをしっかりと握りしめて、一生懸命、ふたをしようとしていました。『ああ今、この子は指先を使って、何か学ぼうとしているな』と思い、いつものようにじっと観察していました。でも、なかなかできない。できなくて、ワーンって泣くのですが、それでも諦めずにずっとやっているんです」

癇癪を起こしてもまだやるわが子の姿を見たときに、聖子さんは、自分でできるまでやり続けたいのかなと感じたという。

「手伝うのは簡単ですが、ここは手を出さずに、子どもができるまで見守ることが大事なんじゃないかなと気づいたんです。自分でできたときに『できたね』『上手だね』って、一緒になって喜ぶと、本当に嬉しそうな笑顔を見せてくれました。どうしてもできなくて助けを求めてきたときは『こうしてごらん』と、少しだけヒントを与えたくらいです」

子どもが自分の困りごとを自分の力で解決したときに笑顔になる、この積み重ねを見ているうちに、親が子どもにどう接するべきか、おぼろげながらわかってきたという。

「まずは見守ること。それから言葉がけが大切ですよね。今日できなくても明日になったらできるかもしれない。それを信じて『香音ちゃんだったら、できるってわかっているよ』と声をかけると、子どもはやる気になるようです。何度も失敗して、悔しくて、またトライして、いつかできるようになる。その達成感や喜びが力になっていったようです」