子どもが言うことを聞いてくれない。そんな時はどう声をかけるべきか。小児科医の松永正訓氏は「『~しちゃダメ』と叱れば親の意向でしか動かない子どもになってしまう。オーストラリアで行われている『ノー』を連発しない育児法には大いに学ぶべきものがある」——。

※本稿は、松永正訓『オンリーワンの花を咲かせる子育て』(文藝春秋)の一部を再編集したものです。

子どもを甘やかし、恥をかかせる日本の子育て

「まあ、○○ちゃんたら、こんなにお行儀が悪くて、ほんと恥ずかしい」
「同じクラスの△△ちゃんは、指しゃぶりなんてしていないのに、あなたはいまでも指をしゃぶっていて、ああ、恥ずかしい」

お子さんが、2~3歳になったころ、こんな叱り方をしていませんか? 日本の子どもは大変甘やかされて育つといわれています。一方、西洋では子どもに対するしつけは厳しいとされています。

松永正訓『オンリーワンの花を咲かせる子育て』(文藝春秋)
松永正訓『オンリーワンの花を咲かせる子育て』(文藝春秋)

みなさんは、アメリカでは赤ちゃんと両親が別の寝室で眠るということを知っているかもしれません。したがってアメリカには夜泣きというものがありません。泣いても母親が来てくれないからだといわれています。

日本では母親が自分の子をさんざん甘やかし、やがて子どもと会話が成立する年齢になると、急に手のひらを返すように厳しい態度に出て恥をかかせます。このことを最初に学術的に指摘したのは、文化人類学者のルース・ベネディクトが書いた『菊と刀』という本です。

日本の文化を理解するために太平洋戦争末期に書かれた作品です。ベネディクトの目には日本人という存在が非常に不思議なものに見えました。