景気後退は消費税増税から始まった

忘れてはならないのは、今回の景気後退が2019年10月の消費税増税で始まったという事実です。2019年10~12月期のGDPは年率で7.1%も減少しましたが、コロナウイルスの影響は入っていません。つまり、消費税増税の影響が多大に出ています。

森永卓郎『年収200万円でもたのしく暮らせます コロナ恐慌を生き抜く経済』(PHP研究所)

消費税増税が消費を失速させたのだから、消費税を下げれば消費は戻ります。しかし、おそらく政府は踏み出さないでしょう。

政府は2020年4月7日に新型コロナウイルスの感染拡大に対する緊急の経済対策として「30万円現金給付」を発表し、後に撤回しましたが、その真相についてお話ししましょう。

当初は新型コロナウイルス禍の影響で収入が減少し、住民税非課税になった人、あるいは収入が半分以下になった等の世帯を対象に30万円を給付する方向で進めていました。ところが、政府の試案では支給対象は国民全体の20%程度に限られることがわかると世論が反発。公明党からの突き上げもあって、急遽、全国民に一律10万円給付に変更になりました。

「現金30万円給付」案はなぜ出されたか

私は、この経済対策は、史上最大の愚策だと思いましたが、なぜこんなことが起きたのでしょうか。

発表に先立って、自民党の政務調査会が2020年3月31日、安倍総理に緊急経済対策の提言をしました。「緊急経済対策第三弾への提言~未曾有の国難から『命を守り、生活を守る』ために~」というものです。

そこには、こう書かれていました。

「消費税5%減税分(国分)に相当する約10兆円を上回る給付措置を、現金給付・助成金支給を中心に、クーポン・ポイント発行等も組み合わせ、全体として実現すること」

「所得が大きく減少し、日常生活に支障をきたしている世帯・個人に対し、緊急小口資金特例とは別に、日々の生活の支えとなる大胆な現金給付を感染終息に至るまでの間継続的に実施し、万全なセーフティネットを構築すること。支給にあたっては、支給基準を明確化し、市区町村に過度な負担とならないよう努めること」

ここから推測できるのはこんなシナリオです。