支給の単位を「世帯」として水増ししようとした
要望された給付措置の予算は10兆円、これを単純に人口で割ると、1人当たり8万円。そのままでは、諸外国の給付措置と比べて、どうしても見劣りしてしまう。そこで支給の単位を世帯として、水増しすることにした。
一世帯あたりの平均人員は2.5人だから、同じ予算で、表面上2.5倍の給付ができる。つまり、8万円×2.5=20万円となる。ただ、それだとインパクトがない。そこで、収入減少などの条件を付けることで対象世帯を絞り込み、一世帯当たりの金額を30万円まで増やしたということではないでしょうか。
そして、最終的に条件をさらに厳しくすることで、この30万円の給付の予算は、3兆円にまで圧縮されたわけです。「10兆円を上回る給付措置」には遠く及びません。
30万円給付案の最大の問題は、条件の複雑さや国民の8割が給付対象にならないということ。これにより、国民の強い批判にさらされ、土壇場で一律10万円給付に変わりました。緊急事態宣言に伴う自粛で苦労するのは、すべての国民ですから、変更は当然のことでした。
消費税減税を意地でも阻止したい財務省の魂胆
もう一つ指摘すべき点があります。
先ほどの自民党政調の提言をみると、「10兆円の予算は、消費税5%分」という主旨が書いてあります。じつは、自民党の若手議員からは、新型コロナウイルス感染拡大にともなう経済対策として、消費税を5%に引き下げる案が提案されていたのです。
「10兆円を給付する」という文面が匂わせるのは、「現金給付でその分を国民に還元するから、消費税減税をあきらめなさい」ということです。実際、自民党政調の提言のなかに、消費税減税は一切含まれていません。消費税減税だけは何が何でも抑え込みたい財務省の魂胆があり、それを踏まえた回答といえます。
この史上最悪の愚策に、財務省の影を感じざるをえません。