なぜ台湾をリスクを犯して支援するのか

一般に台湾の野党である国民党は中国寄り、大陸寄りとされるが、香港への支援については「より実効性のある支援をすべきだ」と声をあげているという。

中国の統治下にある香港の情勢に台湾が物を申すことは、中国・習近平主席を大いに刺激する。すでに各国の香港への言及に中国当局は「内政干渉だ」と非難を浴びせている状況下で、台湾にとってはかなりリスクの高い支援の申し出だ。それを知っての表明からは、「中国とは違う自由民主主義国・台湾」を強調したい蔡英文の強い意志が見て取れる。

蔡英文は2020年1月11日の総統選挙で勝利し、現在2期目に突入、コロナ対応でも国民の支持を得ており、体制は盤石に見える。総統選挙での大勝は「香港のおかげ」であり「習近平のオウンゴール」という声も聞かれるように、2019年6月から始まった香港デモを力でねじ伏せる北京の手法が、「中国に屈しない」との方針を掲げる蔡英文を大いに助ける格好になった。

中国を前に台湾と香港の距離が縮まった皮肉

「今日の香港、明日の台湾」という言葉も生まれた現在、台湾と香港は中国の大陸政権を共通の敵として、歴史上、最も近しい関係にあると言える。特に両国を結び付けたのが2014年に香港・台湾で起きたデモで、香港では雨傘革命、台湾ではひまわり運動と言われる、いずれも中国との距離を問う(対中接近を拒絶する)運動だった。

かつては「台湾より香港の方が国際的(香港人)」「香港は狭くて三日で飽きる(台湾人)」と言い合うなど「よそよそしい雰囲気」(野嶋剛「共鳴する香港と台湾」、『香港危機の深層』所収)さえあったという香港と台湾だが、伸長する中国を前に両者の距離が縮まったのは皮肉な話でもある。