世界各国がほぼ同時期に、同様の「国難」に直面
いうまでもなく「硬直化」「単一専門」「思考停止」「前例に固執する」「不可能である理由を羅列する」は、〈レジリエンス〉に反する態度だ。
ここ数年、東京オリンピック・パラリンピック特需に沸いてきた日本は、消費や観光分野では訪日客のインバウンド需要に頼り、一方の介護や製造、農業といった人手不足分野でも、外国人の技能実習生に活路を見いだしてきた。いずれも〈海を越えての人の往来〉が大前提。ここが崩れたとき、次なる「プランB」「プランC」が出てくるかどうか。
世界各国がほぼ同時期に、同様の「国難」に直面している。このまま沈み込むか、それとも新しい未来に踏み出せるかの違いは、各国の〈レジリエンス〉にかかっているのかもしれない。
リモートワークで、これまで疲れ果てていたことに気づいた
では、私たちの個人の働き方や生き方はどうだろう。今回のコロナ禍では、意外な気づきもあった。在宅勤務を通じ、これまで長時間労働や過酷な通勤環境、人付き合いで疲れ果てていたことに気づいた人も多いはずだ。
あれほど叫ばれ、しかし長年「絵に描いた餅」状態だった「働き方改革」や「ワークライフバランス」が、あっさり実現したことに社会全体が驚いてもいる。早朝出勤、深夜帰宅で家庭での存在感が乏しかった父(夫)が、朝・昼・夕とゆっくり家族と食卓を囲み、本来の「生活」を取り戻したという声も聞く。
米スタンフォード大学の研究では、在宅勤務を望んで許可されたグループは、許可されなかったグループよりも生産性が上がり、離職率も下がることが明らかになっているという。
もっともリモートワークが可能な職種は、全体の3割ほど。住環境の質や、育児・介護の有無で、生産性や満足度にも差が出ている。新入社員や新しい部署に配置替えされた人のケアやコミュニケーションもおろそかにできない。対面でこそ生まれるアイデアや信頼もあるだろう。今後もバランスをとる必要はありそうだ。
一方で、雇用と人手のアンバランスさも際立っている。医療従事者やスーパーやドラッグストアなどのエッセンシャルワーカーは多忙を極める反面、多くの農家が農産物を収穫できずに大量廃棄している現実がある。廃業や倒産が続く飲食業や観光業もあり、職を求める人々と、人手不足業界のマッチングの仕組みづくりも必要だろう。