国難で沈み込む国と、未来にステップアップする国との違いは

不況が短期間に収まらない見込みも強い。世界銀行は8日、2020年の世界成長率を、-5.2%見込みと発表した。コロナ以前の1月予想では+2.5%成長だったことを考えれば、「戦後最大の落ち込み」の言葉もリアルに響いてくる。地域別では中国が微増で+1%、ユーロ圏は-9.1%、米国と日本はお揃いの-6.1%予想である。

今後奇跡的に新型コロナウイルスが消滅し、経済活動がフル稼働すれば、21年に+4.2%の成長が見込まれるが、それはあくまで楽観的な試算である。第2波、第3波が襲来し、再び経済活動が鈍化すれば、不況は数年単位で続くと見られている。

そんな状況下で、改めて脚光を浴びているのが、「レジリエンス(resilience)」の考え方だ。

本来は「反発性」や「弾力性」といった物質の性質を示す物理用語だが、近年は地球環境や教育分野、ビジネスや政治経済の分野まで広く用いられている概念だ。

しなやかに回復するためにはどうすれば…

たとえば、水分も養分も失った枯れ枝は、外からの衝撃にたわいなくポッキリと折れてしまう。だが、しなやかで健康な枝は、多少の衝撃を受けてもみごとにたわみ、外的衝撃を跳ね返すことができる。この「しなやかな強さ」や「回復力」を、生き方や働き方、国家や企業のリスクマネジメントにも応用する動きは、世界経済フォーラム(ダボス会議)で熱い議論が繰り広げられていることからもわかる。

地震や津波、山火事やハリケーン、干ばつや台風、世界同時不況やテロ攻撃――。私たちの世界は不確実性に満ちている。まっとうに生きていても、いつ日常が崩れ去るかわからない。目に見えない微細なウイルスが、世界の主要都市から人影を消し去るなど、数カ月前に誰が想像しただろうか。

予想外の衝撃が私たちの生活を直撃したとき、軸からポッキリと折れることなく、しなやかに回復するためにはどうすればよいか。

まずは事実から目を背けず、しっかりと現状認識をすること。その際、ウイルスや災害といった人智の及ばぬ問題と、自分のできることはきちんと分けて考える。次いで短期目標を設定し、中長期的なビジョンも明確にする。従来の思考法に囚われず、柔軟な視点や軽やかなフットワークを持つこと、明晰な判断力と決断力を持ち、前進していくエネルギーを得るためには、安定した自己信頼力や肯定力も欠かせない。