南シナ海での作戦量を増加させる米軍

中国に対する厳しい外交姿勢を示しているネオコン勢力は共和党・民主党の両党内に存在しており、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)は天安門事件の亡命者らを支援する取り組む有力者の一人でもある。共和党だけでなく民主党側も中国の民主化問題に関しては強硬姿勢を示す傾向を持っており、この流れは大統領選挙の結果いかんにかかわらず止まることはないだろう。

また、南シナ海における米中両国の軍事活動が活発化している点も重要だ。米軍はトランプ政権の4年間の軍事費増加を図ってきており、対中抑止のための安全保障環境の立て直しを図っている。その最前線が南シナ海であり、同海域における「航行の自由作戦」である。虎の子の空母機動部隊が新型コロナウイルスの影響で活動量を低下せざるを得ない中、米国は中国に隙を見せないように南シナ海での作戦量を増加させている。その米軍の動きに呼応するように、中国海軍も演習の活発化などを実施しており、同海域では偶発的な紛争が発生する可能性も高まっている。

米国全体が対中政策に軸足を移し続ける

仮にバイデン政権になった場合、民主党は共和党と比べて軍事費の抑制傾向を強めるものと想定されるが、トランプ政権が進める中東からの東アジアに兵力を移転させる方針に大きな変更があるとは思えない。むしろ、対イラン、対ベネズエラ(キューバ)などへの圧力に伴う軍事的・外交低な負荷が低下するとともに、欧州との関係改善を通じた同盟国資源の活用など、中国シフトをさらに推し進める環境が構築されることになるだろう。米ロ関係や米サウジ関係の悪化が懸念されるものの、米国全体が対中政策に軸足を移し続けることは間違いない。

2016年トランプ大統領が米国大統領に就任した当初、メディア上では同大統領は第3次世界大戦を招くというでたらめが盛んに喧伝された。しかし当時は、米国は軍事費削減の影響で十分な戦力を稼働させることができない状態であり、国内世論も対中強硬政策を支えるほど十分に熟成された状況ではなかった。つまり、米国は中国に対して事を構えることなど全く不可能な状態であった。