「民主党系州知事は民間経済を崩壊している」

もう1つ事例を挙げよう。

米国では新型コロナウイルスに伴う都市封鎖(ロックダウン)の権限は州知事が持っている。そして、同ウイルス問題が深刻な州は大都市部が多く、民主党州知事が存在しているケースが大半だ。米国における都市封鎖に関する州知事の権限は絶大であり、業種などを選定して経済活動を停止させることも可能である。最近では、トランプ大統領は連邦政府として経済再開を強く促しつつ、「民主党系州知事は民間経済を破壊している」として批判している。

つまり、民主党を市民生活に過剰な介入を行うことで私有財産権を侵害し、米国民の自由を保障する合衆国憲法に照らし合わせて望ましくない存在として印象付けようとしているのだ。これには民主党の経済運営の手腕を否定する目的もあるが、その根底には民主党に連邦政府を握らせた場合に行われる増税や規制強化を想像させる意図が存在している。

民主党には法と秩序に基づく政府運営ができない

したがって、連邦政府(共和党)VS地方政府(民主党)の対立の文脈には、今回の暴動に対する対処の在り方も当然に内包されている。共和党側から見ると、暴動が発生している大都市部は民主党の州知事・市長が存在しており、「民主党には法と秩序に基づく政府運営ができない」という論理展開に繋がるのだ。

本来は暴動には民主党側が所管する地元警察や州兵が対処することが筋である。しかし、トランプ大統領が米軍の投入を示唆することで、共和党の法と秩序を守る姿勢を支持者に向けてアピールしているとみなすべきだろう。このような文脈を捉えなくてはトランプ大統領の発言の真意、そして同発言を支持する人々の受け止めは理解できないだろう。ちなみに、エスパー国防長官は米軍の投入に否定的だが、それは政治的な観点からの発言ではない実務担当者として発言だからだろう。