コロナ禍の魔女狩りに不合理さはないのか
かの“トイレットペーパーが足りない騒動”も今は昔だろうか、店頭から一斉に消え、買い求める人で朝から行列ができた。トイレットペーパーはほとんど国内生産であるにもかかわらず、それがSNSの書き込みひとつで日本中がパニックとなった。のちに書き込んだ者は個人情報を特定されて吊るし上げられた。私はトイレットペーパーのデマより、この吊し上げのほうが気になった。確かに悪いことだが非難の目的からは大きく逸脱し、社会的に晒してやろう、仕事や将来を奪ってやろうという闇を感じた。アルベール・カミュの『ペスト』に書かれた疫病下の社会、ディストピアそのものだったからだ。ネットは常に荒れるものだが、それとは違う魔女狩り的な不合理を感じた。
当初、コロナ禍の叩きの対象はクラスターを起こしたライブハウスであった。そしてイベントや営業の途絶えたことを訴える芸能人たちに移り、居酒屋となり、パチンコ店となった。パチンコ叩きが本格化するそれ以前、3月6日の衆院内閣委員会でパチンコ店に対する休業の働きかけを立憲民主党の早稲田夕季氏が提案している。自民党の武田良太国家公安委員長は民間企業への営業介入は難しいと回答した。
憲法を無視する自粛警察たち
日本の憲法上、個々人の経済的自由権を犯すことは不可能である。私は事の端緒はこの辺りと考えるが、これを快く思わないネットを中心とした自粛警察たちが行動を激化させる。じつはパチンコ店に対する国の強い休業要請は緊急事態宣言が全国に出てから一週間以上も経った4月23日のことである。また都内に限れば、それより前の4月4日から5日にかけて、大手を中心に3分の1の店が自主的に臨時休業を決断している。この時点でセーフティーネット保証(5号)からパチンコ店が外されたこともあり(のちに見直し)、残りの3分の2の中小を中心に営業を続行した。
「商売ですし、不要不急のエンタメですから、興味のない人や嫌いな人が来ないことはもちろん、文句を言うのも当然です。でもこちらからすれば支持者だけを向いてればいい話です。お客さんが来る限り営業を続ける、求められるのだから当たり前の話で、来ないならやりません。すべてお客さんのためだし、娯楽はそれでいいんです。だから休業要請にも従った」