人間は自分と関係のないことにはひどく道徳的に

これは先のパチンコ店幹部がニュアンスを変えながらも、これまで繰り返してきた持論である。今に至るまで、この彼の論が揺るぐことはなかった。もちろんそこには自分たちを支持してくれる、イコールお金を落としてくれるお客のために開けるという算段もあるだろう。かつてオタクカルチャーを商売にしてきた私にもわかる。「砂漠のインド人は魚を食わぬことを誓う」ゲーテの言葉だが、これをきっかけに忘れられた古典に注目が集まるのは喜ばしい。人間は自分と関係のないことにはひどく道徳的になる生き物だ。そして休業に応じない店舗は容赦なく晒された。私はその間、そういった店舗を取材したが、どこも淡々と営業していた。私の故郷、千葉の店舗は全国から集結した“パチンカー”でいっぱいだった。客たちは言う「こんな田舎だとコロナって言われてもピンと来ないんだよね」。不届者だ、情弱だと笑うだろうが、大半の市井の人々の素朴な本音だろう。声なき声はいつの時代も大勢だ。

「コロナで死ぬより経済で死ぬほうが怖い。ね、そのとおりだったでしょ?」

パチンコ店にとってのブルーインパルス

GWが明けるとパチンコ店は営業を再開し始めた。5月25日に全国で緊急事態宣言が解除されるとパチンコ店だけでなく、多くの商業施設が随時営業を再開した。みな自分の人生に、生活に戻りはじめたはずだった。あれだけ騒いだクルーズ船も、トイレットペーパーも、ライブハウスも、自粛警察の跋扈ばっこも、パチンコ店に対する一斉攻撃すら、みな話題にしなくなった。

「私たちも叩かれましたし反省する部分はあるでしょう。でもクラスターはありませんでした。最終的には98%のパチンコ店が営業を自粛した。夜のお店は現在進行系でやり玉に挙がっていますが、私たちは身銭を切って我慢したんです。みなさんと一緒です。ブルーインパルスだって誇らしく仰ぎましたよ。自粛や予防は徹底しました。台だってハンドルから何から、スタッフやヘルプがいつもの倍の時間磨きました。誰も称賛しなくったっていい、乗り切った私にとってのブルーインパルスです」

5月29日のブルーインパルスは医療従事者に対するものだが、あれは最悪期を乗り切った日本人それぞれにとってのブルーインパルスでもあったのかもしれない。