ウェブメディアは修羅の世界。もう疲れた

ネットニュースの編集業務に就いたのは、32歳のときだ。この段階で、すでに一緒に仕事をする人の80%は年下だった。そんな環境で14年以上仕事をしてきたが、数年前、インターネットが名実ともにメディアの覇権を握りつつあることが明らかになってきたころ、「あっ、オレはもう“終わった”」と強烈に感じるようになった。そして2019年、インターネットの年間広告費が初めてテレビのそれを超えた。

ウェブメディアは動きが速い業界である。それまで「成功法則」と持てはやされてきた手法が急に通用しなくなることもあれば、グーグルが検索アルゴリズムを変更した途端、サイトの広告収益が激減し、窮地に追い込まれるようなこともある。

こうした修羅の世界でなんとか14年間やってきたが、正直、最前線でウェブメディアの運営・編集に従事するのが、いいかげんキツくなってきたのだ。依頼された原稿を書く程度であれば、まだまだ対応できる。ただ、これからますます競争が激化するであろうウェブメディアの、ヒリつくような編集現場で中心に立ち、強力なライバルと対峙する熱意をどこまで持ち続けられるか。私は自信を持って「できる」と言えなくなってしまった。

才能あふれる若手に感心し、「負け」を認める瞬間

競争は厳しいが、可能性も無限にある。そんなビジネス環境こそ、野心を抱く若者が全力で取り組むほうがいい。私自身も、32歳のころは「チクショー! 新聞と雑誌の野郎! オレらネットニュースを下に見やがって! いつかギャフンと言わせてやる!」という反骨心が仕事の原動力だった部分がある。

こうした下剋上的な意識が充満した時期を経て、ネットがメディアの王者となった今。もうネットメディアは自分の居場所ではなくなったように感じている。私はネットニュース編集と並行して、ウェブ上で展開される広告施策、PR施策の企画・制作にも関与してきたが、近ごろは大手広告代理店の若手が動画や新聞広告などを連動させた秀逸なウェブ企画を次々と生み出し、話題を呼ぶようになった。

最近の例でいうと、ポカリスエットの「高校生がZoom風画面で歌うCM」や、グリコの「史上最小のプッチンプリン」といった企画がネット上で評判になっている。こうした企画が登場した際、以前の私であれば「ケッ、ワシのほうがもっといい企画を考えられるぞ。クソ! 一泡吹かせてやる!!」と息巻いたものだが、いまでは「いい企画だな~」と素直に感心してしまうようになった。もはや、完全に「撤退」の時期である。それは同時に「後進に負けた」ということを認めるときなのだ。