仕事相手に余計な気づかいをさせたくない
素直に「こんな才能あふれる人々が活躍する場所に、自分の居場所はない」と思うようになったことに加えて、もうひとつ、撤退を決意した材料がある。それは、仕事を発注してくれる関係者たちに、余計な気づかいをさせてしまっているのではないか、ということだ。
これまでの実績や付き合いもあるから引くに引かれず、温情や忖度で関係者が私に声をかけてくれる状態というのは、あまり健康的とはいえない。おそらく先方も若干困っているのではないかと思う。「自分が担当の間はいいけど、次の担当になったとき、果たして中川さんに頼めるかなぁ」「この案件はスケジュールにまったく余裕がないのだけど、中川さんに依頼しても大丈夫だろうか」「本当は他の若い人に依頼したい気持ちもあるが、上司が『中川さんに相談してみろ』と言うし、声をかけなきゃ悪いよな……」といった葛藤を抱えているのではないか。
老兵は去り、後進に道を譲る
考えすぎかもしれないが、“自分が制作スタッフのなかで最年長”という案件ばかりになると、ふとした瞬間に「俺がいつまでも現場に居座っていたら、若手はやりづらいんじゃないかな」などと思ってしまうのである。
仕事を受注する立場の者は、発注相手に余計な気づかいをさせてはいけない。これも、2020年8月31日でセミリタイアすることを決めた、大きな要因のひとつだ。あとのことは、私よりも若い弊社唯一の従業員・Y嬢に委ねるので、彼女が思うとおりにやってもらえばいい。老兵は去るのみである。
それではセミリタイア後、人間関係はどうなるだろうか。幸いなことにネットがあるので、直接、顔を合わさなくても一定の関係は維持できるだろう。公私ともに、これまでお世話になった方々とは、相手が困ったときに遠慮なく相談してもらえるくらいの関係性を続けていきたい。もちろんイザというとき、私でお役にたてることがあるなら、全力でお手伝いをするつもりだ。