また、労災保険や年金などの社会保障関係法も、遺族給付に関して内縁の配偶者を受給権者に含めるような規定を置いています。内縁の配偶者が遺族年金の支給を受けるためには、たとえば同居が証明できる住民票など、事実上婚姻関係と同様の事情にあったことや、相手により生計を維持していたことを証明する書類を社会保険事務所に提出して裁定を受ける必要があります。
労働者が死亡したときに支払われる死亡退職金は、就業規則や労働規約などによって定められており、通常は誰にどういう順番で支払われるかが明確になっています。多くの場合には内縁の配偶者に支払われるような定めをしていますが、「遺族にこれを支給する」と簡単な定めしかない場合にも、内縁の妻が受け取ることができるとしたケースもあります(最高裁・1980年11月27日判決)。
ただし、注意すべきは相手方に法律上の配偶者がいる重婚的内縁の場合です。この場合、民法732条が定める「重婚禁止」との関係で問題となります。
法律上の配偶者がいるケースでは、原則的には法律婚が保護されます。しかし、法律婚関係が実体を失って形骸化した状態が固定して長期間にわたっている場合には、内縁関係にあった者が年金等の関係で「配偶者」とみなされ、給付を受けられるケースも多くあります。
この場合、法律婚と内縁の配偶者それぞれの生活実体を比較するというより、法律上の配偶者の生活実体を見て判断されることが多いようです。
最高裁判決でも同様に、法律婚が事実上の離婚状態にある場合には、内縁の妻が遺族共済年金を受けるとしたものがあります(最高裁・05年4月21日判決)。
※すべて雑誌掲載当時
(弁護士 住田裕子=監修)