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妊婦たらい回し事件など、病院の診療拒否を問題視するような報道は増えています。しかし、これらが法律上の「診療拒否」にあてはまるかどうかは事案ごとの検討が必要です。訴訟についても、診療拒否に関するものは少なく、「診察を断られたから即、損害賠償請求」ではないのです。
医師には、基本的に患者の診療を拒否してはならないという「応招義務」(医師法19条1項)があります。しかし以下の3つの条件に当てはまる場合は、応招義務違反にならない可能性があります。
1点目は、患者の病状が重篤、緊急でない場合。2点目は、診療できる医師がいないなど、患者を受け入れられる状況でない場合。3点目は、ほかに同等の診療を受けられる医療機関が近隣にある場合です。
では、3条件とも該当せず、応招義務に違反していたとして、どのような損害賠償請求が考えられるのでしょうか。
一般的な診療過誤に基づく損害賠償請求では、「過失」と「因果関係」を事実上、患者側が立証する必要があります。「過失」とは、医療機関や医師に落ち度があったかどうか。「因果関係」とは、患者の病状悪化や死亡などの損害が、医療機関側の過失によって引き起こされたかどうかという点です。これに対し、応招義務違反については、医療機関・医師側が右の条件を満たしていることを立証する必要があります。